しろにじ創作倉庫



橋を渡って

2005年06月07日(火)

橋を渡れば そこは希望の国自由の国

橋を渡っておいで
自由のない国から誰もが自由を享受する国へ

国境の錆びた看板にはそう書かれている
だけど誰一人それを読めるやつはいなかった

橋の向こう側にある国だって
この国とたいして違いはないはずさ
だけど誰一人それを信じるやつはいなかった

橋を渡って
国境を越えられる者はいなかったから
生きて再び帰ってきた者はいなかったから

そのはずさ
やつらはみな橋の下を流れる河に眠っている
銃を持った国境警備兵に撃たれてしまったのさ

国境警備兵にだって
橋を渡ろうとするやつの気持ちは痛いほど解るんだ
だけどそれが彼らの仕事なのさ
監視の眼を逃れて
橋を渡る者 国境を越えようとする者に
引き金を引くことが

橋の向こうもこの国も
支配してるのは絶望という名の未来だけ
人生はどっちに転んでも同じこと
だけど俺だって希望のひとつくらい信じたかった

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