ずいずいずっころばし
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2005年09月17日(土) 追憶のひとひらに咲く花


よその家に行ってお玄関に花が活けてあるとその家の女主人のたしなみを感じる。
我が家でも家のそこここに花を活けている。

活けた花の辺りから
あかりが射して辺りをあたためてくれたり、さわやかにしてくれ心地よい。

何もかもが枯れて花の一輪も咲かない真冬に、
黄金色(こがねいろ)のつわぶきの花が庭の一隅に咲くとき、そこにも花の灯りがともる。

真っ白な雪景色の中に咲く紅い山茶花。
庭を飾る冬のブローチ。

お正月になると母は床の間に、上から床まで垂れる柳をよく活けた。
長い柳の束を途中で一結びし、美しい曲線を描いて床に垂らす。
子供心にその長くやわらかな曲線の美しさにみとれた。


夏には籠で編まれた舟型の花入れに涼しげに花を活け、上からじざいかぎで吊す。
夏の風がゆるやかに舟を揺らすと、その空間は湖水に浮かぶ涼やかな風景となる。
母のゆかた姿も美しく、花を活ける母の心のすがやかさに見惚れた。

うっとおしい障子戸を取り払って座敷用の御簾をかけると、夏が何遍訪れても悪くないと思うのだった。
簡単にエアコンをかける風情の無さはさみしい。
籐で編まれたビール瓶のはかま。うちわ立てには涼しげな絵が描かれたうちわ。


花を愛した母と懐かしい四季折々の風景は心の中に今でも昨日のことのように思い出される。
母はもう黄泉の国に逝ってしまったし、思い出の詰まった我が家には、もう待つ人もなく庭池の水も澱んでしまった。

過ぎし日は帰らじ。

されど追憶のひとひらに花は咲けり。




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