まゆのウォーキング、ぼちぼち日記

2011年08月29日(月) ■東日本大震災「命の記録」からの紹介…小さな声に耳を傾けて

今日から一週間は、東日本大震災関連について、
私が見つけた本や記事からの紹介です。

今日は、先日発売されたばかりの
この本↓からのお話紹介です。
NHKの取材記者たちがみた被災地の現状や、
そのときの被災者の方々の様子が書かれています。



「明日へ―東日本大震災 命の記録」





どの話にするか、迷いましたが、
今日は、この話にいたしました。



■「宮城県多賀城市」
小さな声に耳を傾けて…

(P54〜57から引用)


震災直後、朝の情報番組の取材クルーとして
多賀城市に入った私たちは、
避難所に暮らす方々へのアンケートを行った。

通信手段もままならず、
被災者が直接声をあげる手立てがない中で、
何に困り、どんなものを必要とし、
何を知り何を伝えたいのか、できる限り多くの声に
耳を傾けることから始めようと考えたのだ。

避難所から許可をいただき、
カメラは持たずにスタッフ全員でアンケート用紙を手に、
一人ひとりの声を聞いて回った。

当時、避難所にいた500人あまりの
被災者のうち、延べ170人の方々に
アンケートへのご協力をいただいた。
その声は、実にさまざまだった。



「何も考えられない」
「家も車もお金も失った」
「家族や友人の安否状況を知りたい」
「ライフラインの復旧はいつなのか」
「もっと地元の情報を伝えてほしい」
「仕事はどうなるのか」
「ローンはどうすればいいのか」
「水がほしい」
「薬がない」
「下着がほしい」
「車いすが流されて動けない」
「家の片付けをする人手が足りない」
「避難所の衛生面が不安だ」
「プライバシーが保てない」




あらかじめテーマを決めて取材していたらわからない、
知ることもなかっただろう本音の訴えが次々に寄せられた。
避難所に身を寄せる方々は、被災しているという1点を
のぞいては、家族状況も置かれた環境もすべて異なっている。
困っていることも知りたいことも、それぞれ違うと
いう当たり前のことに気づかされた。

行方不明の祖母の安否を気にかける少女。
子どもの栄養不足を心配する母親、
障害のある妻を残して家の片付けに向かう夫…
私たち取材スタッフは、
このアンケートを手がかりに
取材を進めていくことになった。



震災から2週間後、
アンケートに答えていただいたある家族が、
避難所を出る準備をしていた。




夫婦と小学生の2人の子どもという4人家族だった。
アンケートでは、自宅のマンションが被害にあい、
ライフラインが復旧するまで避難所に
とどまる予定だと書かれていた。



この頃、多賀城市は一部で電気が復旧したものの、
ガスも水道もまだ使えない状況だった。

食事など最低限の暮らしを支えるものも、
避難所以外ではほとんど手に入らない頃だった。

そして、子どもたちは地震の揺れを怖がり、
マンションに戻ることをいやがっていた。




ご夫婦に話を聞くと、



「避難所の子どもたちが
 インフルエンザにかかり、
 自分たちの子どもも熱を出している。
 このまま避難所に残れば、
 他の避難者に迷惑がかかるから」




と教えてくれた。
さらにこの頃、多賀城市では避難所の集約が始まり、
私たちが取材していた避難所に、多くの被災者が
移ってくる予定になっていた。
ご夫婦は、



「自宅が全壊し、避難所以外に
 住む場所のない人のために
 場所を譲らないといけないから」




とも話していた。



同じ被災者を思いやって、
苦渋の決断を下した家族。




こんな些細な話は、
テレビでは伝えられない話題かもしれない。
視聴者が求める情報とは違うかもしれない。
それでも私たちは、被災地の片隅で起こっている
一人一人の被災者の思いに耳を傾けようと、
カメラを回した。



避難所から自宅まで歩いて30分の道のり。
子どもたちが、道路わきに
瓦礫が積み上がったままの町の様子を
初めて目にして涙をこぼしながらも、
強く手を握りあい、
家へと向かう家族の姿があった。




後日、ご家族からメールが届いた。



「地震の不安はまだありますが、
 みなで手を取り合って頑張っています。
 今度は復興した町を取材に
 来てください」




アンケートに答えてくださった多くの人からも、
同じような声をもらった。



再出発の道筋すら見えない不安の中で、
被災した方々は、明日へと前を向いて
生きようとしていた。




(ここまで引用)



この話は、一つ一つの場面が目に浮かび、
心に響いてきました。
ご夫婦の決断…すごいなぁと思いました。
余震におびえながらも、きっと
家族で支え合っていたのだと思います。
今は、少しは落ち着かれたでしょうか。


この本には、このようなTVには、
出ないようなお話もたくさん書かれています。
明日も、この本からの話を紹介しますね。





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