まゆのウォーキング、ぼちぼち日記

2006年12月26日(火) リンゴの行方 その2

昨日からの続きです。


さて、掃除のおじさんに、
「100円、くれない」
おばさんについて尋ねたら、
おじさんは怒ったように、
こう言ったのだ。



「あの、おばさんは、
 とんでもないんだよ、
 ホント、あのおばさん、じゃないな、
 あのばあさんだな、とんでもないぜ」




私は、とてもビックリした。
何があったのか?
何を怒っているのか?



「なんかあったんですか?」 
「あのばあさん、顔をみると
 100円貸してって
 いうけど、何度か貸したけど、
 返してくれた試しがない、
 まぁ、それはいいけどさ」

「あれ?おじさんには、貸してって言うの?
 私には、100円、くれない?って言うよ」
「うん、いつも貸してって言うな」
「へぇ、じゃ、人を見分けているのかな?」

「そうだろうな、オレはこの辺りで、
 いつも仕事していて、顔見知りだから、
 貸して、なんだよ。他の知らない人には、
 くれない、って言っているんだよ、たぶんな」
「あっ、なるほどね…そっか…」




どうやら、おじさんも、おばさんに
何度か100円を渡しているらしい。
もちろん、返してくれることを
期待してるワケではないらしいが。



そして、さらにこう言った。



「あのばあさんはね、女を楯にして、みんなに
 お金を無心してるんだよ。
 男のホームレスだったら、頼めないだろう。
 女だからってこと利用してるのさ」




それを聞いて、私はこう言った。



「女の人だと、
 いろんなハードルがあるから、
 稼ぐ手だてにしているんだね」




と、おばさんのことを
少しかばうと、おじさんは、
こう言い放ったのだ。 


「あの、ばあさんは、そんなこと、
 考えちゃいないよっ」
「えっ?」




私は、またビックリして、おじさんを見つめた。
おじさんには、まだまだ怒りがあるようだった。


「あのばあさんはね、お金をもらうと、いつも
 ショートホープを買うんだよ。
 知ってるだろう?」
「うん、タバコは吸ってるね」

「その吸ったタバコを、
 いつも座ったところに、
 捨てたまんまにしていくんだよ。
 それだけじゃない!

 ゴミ箱がすぐ側にあるのに、
 ゴミをぽいと、道路に捨てるんだ。
 オレは、掃除する立場だからよ、いつも
 注意するんだ。すると、注意したときには、
 灰皿に捨てたり、ゴミ箱に捨てたりするけど、
 また、すぐに、道路に捨てるのさ。
 あのばあさんの座っていた後は、ゴミと
 タバコの吸い殻がいっぱい捨ててあるんだ。

 男のホームレスは、ゴミなんて出さないよ。
 ちゃんとゴミ箱にいれてキレイにしていくよ。
 だけど、あのばあさんは、そうしないんだよ」




ひぇ〜、知らなかった!
そりゃ、頭に来るね。
うん、もっともだ。
おばさん、いかんね。




おじさんは、さらにこう続けた。



「オレも最初は、かわいそうだと思って、 お昼のパンなんか余ったりすると
 分けていたんだよ。
 だけど、そのパンの包み紙も
 道路に捨ててあったよ。

 驚いたね…
 オレが掃除してるの、知ってるのにだよ。
 しかも、顔みりゃ、100円貸せだぜ、
 とんでもないよ…」




ああ、そうだったのか…
そりゃ、とんでもないな。 
おじさんは、おばさんの捨てたゴミを
掃除しているのだ。
おじさんの怒りは、正しい。




「それは、よくないね…ゴミは捨てちゃ
 いけないよね。
 路上生活してるならなおさらね」
 「全く…ほんとに、頭に来るよ。
 それに、あのばあさんはな、好きで
 路上生活しているから、
 同情しなくていいんだよ」





「えっ?
 好きで路上生活してる?」





「オレが知っているだけで、2回、区の人が来て、
 施設に入るようにすすめられたんだ。
 女の人だしよ。
 でも、それを2回とも断って、
 今の生活してるんだよ。
 そして、100円貸してって
 言ってくるのさ」




ということで、おばさんには、
区からの手が差し伸べられていることもわかった。
そしてそれを、何度か断っていることも…

今まで私は、何度かおばさんと話をしているが、
話したことはほとんど表面的なことなので、
こんなおばさんの実態はまったく知らなかった。
おじさんから聞いて、はじめて
おばさんの実態が立体的に見えた。



そっかぁ…おばさん…
そういう人でもあったのか…
きっと、何か背負っていて、
それが、現れているんだなぁ…




そんなことを思いながら、
最後におじさんに、こう聞いた。



「おばさんの居所知ってますか?」
「うん、たぶん、○○地区の方にいると思うよ、
 あの辺りがねぐらだから…」




私はおじさんにお礼を言って、その地区に
おばさんを探しに行ってみることにした。
おばさんの実態が少しわかったけど、
今日はリンゴ渡そうと思ったしね。
でも、おじさんの話を聞いて、
お金は渡すのはよそう…などと、
思うようになっていた。



てくてく



再び私は歩き始め、○○地区へ。
いるかな、おばさん? 

しかし、おばさんは見つからなかった。
どうしても見つけることができなかったのだ。

さて、私の手元にまだリンゴがあった。
このリンゴ、どうしたものだろう…
この地区には確かに、路上生活者がいる様子が
見えるが、辺りには誰もいなかった。



リンゴ…どうしようかな?
持って帰るのはなんだしな…
私は立ち止まって考えた。





そして、
「そうだ、掃除のおじさんに
 渡そう!」
と思ったのだ。





いつもあのおばさんのゴミ処理を
してくれているのだ。
そうだ、あのおじさんに渡そうっと。
もらってくれればだけど。 

そう思い立ち、私は大急ぎでいちょう並木に戻った。
すると、おじさんは、まだ黙々と掃除をしていた。

ああ、よかった。
そこでまたおじさんに話しかけた。



「おじさん、このリンゴもらってくれない?
 休憩のときでも食べてもらえないかしら?」
「ん?リンゴ?」
「うん、実は、おばさんにあげようと
 持ってきたけど、見つからないし…それに、
 おじさん、いつもおばさんのゴミ掃除しているし。
 ほら、おっきなリンゴなの」




私はリンゴを見せた。
もらってくれるかな? 




おじさんはリンゴをみた。

(こんなリンゴね)








「お、おっきなリンゴだ、うまそうだね」
「うん、とってもおいしいよ、食べて」
「うん、ありがとう、もらうよ」




そう言って、おじさんはリンゴの袋を受けとり、
いちょうの葉っぱがいっぱいのリヤカーの
端の荷物おきの上にちょこんと置いた。



ああ、よかった…
やっとリンゴの行き先が決まった。
リンゴはおじさんのところにおさまった。




私は、おじさんに、
「いろいろ教えてくれてありがとう」
とお礼を言って、おじさんと別れ帰ってきた。

というわけで、
リンゴはおじさんに渡ったのでした。
おじさん、食べてくれたかな?




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