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前を行くヒル魔を見ながら、ムサシは考える。 下校の途中。あたりに人影はない。 次は、どうするかな。
この、目の前の男は、やたらと周囲に恐怖をまき散らしているようで。 友だちだと言うと奇異の目で見られ、良い所もあるというと、奇特な目で見られる。 同情や哀れみのまなざしもあり、相当にこいつは誤解されているなと思う。 それでものそのそと近付いてきた奴には、相当に甘い。例えば、自分や栗田に対して。 一度懐に入れた人間には、かなり無防備になるようだ。
そんなヒル魔が最近、どうにもいじりやすい。 ふとした拍子に意外なリアクションが返ってくる。 恐らくは、栗田と自分にしか見せないだろう仕種。台詞。その、表情。
周りで思われる程凶悪でも無く、周りが恐れる程悪魔でもない。 ただ、人より行動と頭の回転が早いだけの、それだけの男。 それでも時折見せるその仕種にムサシも栗田もおや、と思うのだから「イメージ」の根深さを思い知らされる。
ムサシは、台詞を考えた。
ヒル魔のあのひょうひょうとした仮面をはずす台詞。 最近のムサシの遊びの一つ。
無言で数歩先を歩くヒル魔を、驚かせるような何か。
できれば、顔を赤くさせるようなやつがいい。 釣り上がった目がぽかんと見開いて、それから、さっと赤くなる。 面白い程色の変わるあの、何とも言えない顔を、見たい。
かといって、そう簡単に思い付くわけじゃあない。 思案するムサシの先で、ヒル魔が何かに視線を向けた。 その先に。家の中で優雅に寝そべる猫がいる。
その猫が何をしたというわけではないのだろうが、ヒル魔の目線がしばらく止まる。 腹を見せて床の上を転がり、飼い主相手に思う様にじゃれる猫。
猫、か。 ふと、ムサシの口が動く。思うより先に。 「お前、あれに似てるよな」 何を、と聞くようにヒル魔の眉があがる。 軽く足を急がせ、できるだけ耳へと顔を近付ける。
「手触り」
きゅっと、ヒル魔の眉が寄り。ぎ、とその目が力強く睨む。 返答は、無い。ふい、と顔がそらされてまた、数歩分の距離が空く。
失敗したかな。 思った反応が得られずにそう思ったムサシは。 顔に浮かぶ笑みをとめられなかった。
そうか。時間差で来たか。
やんわりと色付いた耳。
こんなあいつを、どう言い表わしていいのかわからないが。 何度見てもいいな、とムサシは素直に思った。 この遊びは、当分やめられそうに、ない。
1とつけたのは精一杯の強がり。 2を書ける日って来るのか。
20050422このころは日々ムサヒルしてたんだよなあ。
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<倉庫にモドル>
やまだ
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