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ムサヒルでホストしたらどうすりゃいっかなーーて考えてにやにやしました。 あのねあのね、本格ホスト店なの!NO1は阿含なの! 阿含は女を誉めて客つかむし貶しても客を掴むわけです。 ブスとか平気でお客に言っちゃう。そこがウける。
ヒル魔は阿含の補佐つうか専属サブ。ピンでは客と会話がもたない。 ホストとしては客を褒められないので駄目な部類なのですが そこを上手に会話させてヒル魔の良い所引き出してる阿含。
何だかんだと口では阿含はヒル魔をけなしていますが 阿含はヒル魔を気に入ってます。 ホストとして役に立たない部分で有能なのですが 阿含がヒル魔を気に入ってるのとヒル魔も阿含が嫌いじゃないのとで 阿含とペアだったら接客します。コンビとして受けてます。
ヒル魔は武蔵と同棲してんの。阿含は武蔵が大嫌いで追い出したいの。 そう、武蔵もホストです。同じ店で働いてます。
武蔵は口下手であんまり愛想も良くなく、接客も下手。 お客さんにからかわれたりつまんないって言われたりします。 でも結構使命率高いのです。割りと人気が高いのです。
だってショーでは1番人気だからね!!!
ストリップショーだからねええええ!!!!!
だっていけると思うんだ、不愛想でマッチョな脱ぐダンサー。 いや、踊らなくてもいんだけど。筋肉美っていうか 肉体見せるだけでいんですけど。駄目ですか。 やまだはパンツに金挟みますよ。<おい、おばさん…………。
阿含も踊ります。阿含はかなり踊ります。 武蔵にからみます。つうか武蔵を押し退ける勢いです。
ヒル魔は面白くありません。 たまたまヒル魔が働いているお店で人が足りなくて 武蔵を引っ張って来たらヒル魔より人気者になっちゃったんです。 阿含からはホモ的モーションかけられてるし 武蔵はそれを見て機嫌悪くするけど 「ヒル魔は俺んだ」ってアピールしてそれを妨害したりはしません。 あまつさえ「阿含と一緒に暮らしたかったらそっち行けばいいだろ」とか言う。
ヒル魔は「武蔵は俺のだ!」ってさりげなく主張したいから (店内で武蔵をねらってる人は多い。コタとか。ええとセナとか。) (どういうホストクラブなんだ…………) 「俺もステージに出せ!」てオーナーのキッドさんに喰ってかかるし 「もう少し体鍛えたらね」って諭されると1日中ふくれている。 ホストハウス「ヘブン」は毎日大騒ぎ! もうちょっと何かネーミングひねろよやまだ。
マルコはヒル魔の数少ない固定客でして 足げに通っては口説くでもなくヒル魔と時間をだらだら過ごします。 いいところのお坊っちゃんである彼はお金なんてそんなに惜しく無いし その気があるのを見せればヒル魔が喜ぶ訳でもないと知っているから (本命は武蔵で一見あまり上手く言って無いのを知っています) (武蔵がいようといまいと構わないけど恋愛に全力注がないマルコさんです) がつがつしないでいるわけなんですね。余裕なんだな! さすがにイタリアなマフィアはちょっと違うよ!
で、マルコのお友達としてやってきた 同じく良い所のぼっちゃんであるガオがお店にやって来てから 話は色々と進展するんですよ。 ヒル魔の事気に入って、まあ上客になるわkです。
口説かない、悪酔いしない、でも金落としてくれる。
ヒル魔も悪くないかなあなんて思ってるんです。 ヒル魔の独特な接客、頭下げない、偉そうな物言い、 神経さかなでしたりオタクなトークだったり客の素性に突っ込んだ話したり 弱味握ってることちらつかせたりして まあ、そこが可愛いってガオは思っていたりすんですね。
たまたまガオとマルの席に阿含とヒル魔がペアで呼ばれます。 「お前、女の趣味が悪いんだよ」とか言って ヒル魔をけなして回りの客の笑い誘ったり持ち上げたりするのが2人の接客です。 阿含はヒル魔を貶して使うのです。ヒル魔は貶されても笑ってあんまり気にしないのです。 阿含のビッグマウスと、それをそれだけに終わらせない実力とか能力を見て 分析してアドバイスしてやるのがヒル魔の役目です。 そう、ヒル魔はなんだかんだで表に出て来る人じゃない。 裏方。参謀。どうすれば良いのか指示出来る人。 薄笑い浮かべて普段は少し黙っていつつ。 お客さんも阿含もぎょっとするような発言を 時々ぼそりと呟く人です。 (言われるだけではないと思わせる風格と時々見せる色気) (阿含が何だかんだけなしてもお気に入りなんだっていう素振り) (阿含の気を引きたい女はヒル魔をいじる、それをヒル魔はつっぱねる) (それを見て阿含がいじる、そういう関係)
そこでいつものように阿含が「このカスがよ」って話してたら (ガオの事はある程度阿含も認めている金持ち&男なので) (ちょっと気安く、ちょっとタメ口。女の子相手とは違う態度) 「俺はヒル魔がただのカスだとは思わない」とか言う訳です。 言っちゃうのです。言いきる訳です! 手はヒル魔の膝。目はヒル魔に真直ぐ。
ちょっと二の句が接げない阿含。 あまりにストレートに褒められてあっけにとられるヒル魔。 もちろん口説くための計算なんだけどそう感じさせないガオの笑顔。
本気でヒル魔が可愛いと思っている、と店の中で堂々と発言するガオ。 「俺相手じゃいやか?」って聞きながら笑顔。もちろん眼鏡。 (もうやまだ眼鏡から離れろ)
そんな風に言われた事がほとんどなかったからうっかり赤くなるヒル魔。 体を売らない接客がモットーなヒル魔ですが (体を求めてくるような客が今までいなかったというのもある) ガオには凄く良くしてもらったし悪くないよなっていうか 武蔵はこういうのどう思うんだろう……てちらって見ると。
ぷいってあっち向かれてしまいます。
ガオならいいなって思うヒル魔。 ここまで素直に褒められるとさすがにちょっと照れる。 人前でそう言われるとやっぱり嬉しい。 ガオは嫌な事を1つもしないし 同伴もアフターも本当にたくさんお金使ってくれた。
凄く優しい。
俺だってお前の事、嫌いじゃねえよって言ったら 嬉しそうに笑ってくれる。 いんじゃね? ガオ、いいやつだし。 仕事で体使うのって好きじゃねえけど。
ガオならいんじゃね?
で。 やっちゃって。 もっと後悔するかなとか嫌な気持ちになるかなって思ったのに そんなどころかかなり気持ち良くて満足できて。 しつこく誘われたら気分も冷めるのにそんな所も上手なガオ。 嫌じゃない。
どうしよう、俺、こういうの嫌じゃねえ。
なんでだかガオの前では素直になれるヒル魔が思った事を正直に話すと 「お前、接客に向いてねえよな」と笑われて。 「うちのコンサルタントしてみねえか?」ってもちかけられて。
正直、ホストクラブの経営にも手をつけているし ホストやめても構わない、むしろその方が特性を生かせる。
わかっていたのになんで今までホストなんてやってたのかって。
武蔵の仕事してるのが見るの好きだったの。 客の前で阿含とだべるのが嫌いじゃなかったの。 (阿含のちょっと特異なポジションにいられるのは楽しい) (阿含が何だかんだで「カス」呼ばわりする自分に執着しているのはわかっている) (けなしつつ、ヒル魔をそばに置いておきたい、子供じみた態度は嫌いじゃない) キッドだって良いやつで、良い事ばかりじゃなかったけれどあの店はとても心地よかった。
武蔵と一緒にいる事のメリットとデメリット。
卒業する前からあった体の関係。 何が、とかどうして、とか理由も無いままそばにいるのが当たり前になっていた。 離れる理由が見つからなかった。 当たり前のように家を借りてそこで二人で生活する。 楽しい事が待っていると思った。終わる事なんて無いと思っていた。
武蔵との距離がじりじりと広がる。 一緒に暮らしているはずなのに、だんだんと間に溝が深くなる。 良かれと思った事が裏目に出る。 同じ場所で働いているのに店の中ではほとんど会話もない。 目も合わせない。そばにも寄らない。 家に帰る時間もまちまち。 帰って来ない事もあった。
武蔵がいない夜にも慣れた。 家にいても何をするでもなく互いの部屋にこもりがちになる。
もともとの嗜好は正反対でテレビの好みから服の種類、女の趣味から考え方まで 何もかもで衝突するようになった。一緒にいても空気が固い。 うめるように体を重ねて、ごまかすように抱き合った。 接点は体だけ。 その接点さえもとぎれがちになる。
何が悪かったわけじゃない。 どっちがどうだという訳でもない。
武蔵が嫌いになったのでもなくその逆も多分無い。 気持ちが変わったわけじゃあい。ただ、それがあまりに「当たり前」すぎて 別の物が欲しくなっている。ヒル魔も。武蔵も。
多分武蔵の方がそれは強い。
客に誘われても断らない。 無愛想な癖に女が切れない。
そんな事は気にしないつもりだった。 気になる訳が無いと思っていた。 嫉妬や執着。それを武蔵に感じるたびに自分の変わりように恐くなった。 もっと、さばさばとできるつもりだった。
家でも仕事先でも一緒。手に取るように分かる互いの行動。 今どこにいるのか。明日どこに行くのか。誰と会うのか。誰と寝るのか。 嫌になるほど目につくすべて。 なのにこちらに向かなくなった視線。 だからこちらに向かなくなった意識。
たかが、それだけ。ほんのそれだけの事が流せない。 胸にしこりとしていつまでも残る。 口に出して文句を言えば、いたたまれなくなるのはきっと自分だ。 こんな現実を予想したこともあった。 武蔵と一緒に暮らすうちに、空気が乾く予感があった。 その時は気にしない自信があった。 それでも一緒にいられるつもりだった。 ドライで渇いた間でも、何かが変わるとは思えなかった。
自分を見ない武蔵の事が気になるだなんて思わなかった。 女々しい程に変わったのはヒル魔。 失笑するほどに変わらない武蔵。
次第に互いが家から遠のく。 武蔵以外との時間が増えた。それを楽しいと感じるようになった。 それに慣れる。 武蔵がいない時間と場所。武蔵を待たずに過ごす夜。
それに、慣れた。
惰性だけで一緒に暮らして、最後に残ったのがこれだ。 武蔵が自分に向ける視線に興味や目新しさが無い。 嫌われたわけじゃない。単に興味が失せただけだ。
それでも、一緒にいたかった。 一緒にいれれば良いと思っていた。 それだけで良いと思っていた。
思うふりをして自分を騙していた。 思うつもりでごまかしていた。 蛾王との柔らかな時間。しばらく手にしていなかった安堵。 いやでも今の毎日とくらべてしまう。
いやでも気がつかされてしまう。
一緒にいることでの、メリットとデメリット。 この先も武蔵と暮らしていれば、待っているのは手酷い破局か。 破局にさえならないような感情の磨耗、風化した花が風に崩れるように 時間をかけて終わるだけか。 それとももう終わっているのか。
そんな事をいつも考えてる。認めるのが恐かっただけだ。 ガオを見ると余程自分が頼り無い顔をしていたんだろう、 笑いながら濡れた髪をくしゃくしゃと撫でてくれる。 困らせたいわけじゃないとか急がないとか好きにしろとか。
どうしよう。
キッドに相談しても「好きにしていいよ」と言われる。 阿含は面白くなさそうな顔をしたきり、てめえがいなくて困ると思うか? 後押ししてるのか本気なのかわからないようなコメントをくれた。 武蔵は。 期待もしていない。この男はそういう部分で気のきくことを何1つ言わない。
店をやめると決めるヒル魔。 すごく良い話だから誰も止めない。喜んでくれる。 武蔵は目を合わせない。ずっと前から会話は無い。 部屋にいるのが気まずくて掃除ついでに荷物を片付けていたら いつ出て行くんだ、と静かに聞かれた。
喧嘩にもならない。とてもスムーズに言葉が溢れた。 来週の日曜と言うと武蔵はそうかと返事をしただけ。
ガオに言えば部屋をあてがってくれるだろう。 一緒に暮らそうと言うかもしれない。 問題はない。とても上手く話が流れる。
ただ、隣に武蔵がいなくなるだけだ。
何も哀しい事なんてないのに、まとめた荷物があまりに小さくて ヒル魔は手の甲に落ちた雫を妙な気持ちで見下ろした。
武蔵がいなくなる生活なんて考えた事もなかった。 なのに現実はこんなに簡単だ。 こうなると別れるって言葉も怪しい。 おれたち、付き合ってもいなかったんじゃねえのか。
身の回り品を適当に集めて部屋を出た。 ヒル魔の部屋と武蔵の部屋。 外から見上げると片方の明かりは消えていた。
あの部屋の電気の配線、壊してやればよかったな。 二度とスイッチ入らないようにしてやりゃよかった。
自分以外の誰が入っても。 誰も使えなくしてやりたかった。
やまだ
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