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泥門高校内にあるアメフト部室。 ここにネズミが2匹住み込んでいる事を知っている者はあまりいない。
「ヒル魔!すんげえもん見つけて来たぞ!!」
彼の名前はむさっチュ。大工になる事を夢見る若ネズミ。 人間の世界に高い興味を示すものの、悲しいかな彼は頭が悪かった。 毎日欠かさず人間観察を行いながら、「謎」と思う物を収集している。
これは一体何に使うものなんだろう。
わからないまま自宅に持ち帰り、頼もしい同居人に知恵を借りる。 毎日人間観察してりゃあ、大体分かるもんだろうが、と同居人のチューイチは思う。
「今度は何だ」
むさっチュが持ち込むものは、大抵ががらくただ。 ハシにも棒にも引っ掛からない物を御大層に抱える武蔵へ デタラメを教えてからかうのがチューイチの最近の楽しみでもある。 背中に背負った荷物の中からむさっチュは丁寧にソレを引っ張り出した。
チューイチの目の前に引き出されたのは、べろりと伸びた帯状の袋。 薄いゴムで出来たそれはまだ表面にぬめりが残る。
「なあ、これ何だ?」
チューイチはしばらく自分に落ち着けと言い聞かせた。 この、馬鹿は。 よりにもよって何をどこから持って来たんだ。 冷静になりながら、目の前に広げられるそれを眺める。 使ったような跡は無い。 むさっチュの行動範囲は部室近辺。
おおかた、あのホモ2人だろう。
二匹が生活している部室には盛りのついたホモがいる。 人目もはばからない2人だ。ネズミの目線を気にする訳が無い。 昼でも、夜でも。場所も時間も選ばない。 人気が無けりゃいちゃいちゃベタベタ。 何考えてるんだと、説教してやりたいとも思ったが。 今ではすっかり2人に慣れた。 こちらに影響を与えない限り、いくらでも好きにすればいい。
放置しておいた結果が、今目の前に揺れている。
「……どこで拾って来た」 「ゴミ箱」 「…………いつ」 「さっき」
そんな所を漁るな、と思うが。 今迄にも散々むさっチュはその辺を漁ってきた。 今頃、なんでこんなもんがこいつの縄張りに落ちていたんだ? 表面のぬめりを考えると、時間はほとんどたっていない。 ついさっきまで、部室には誰かがいたようだったが。 人数は多かったような気がする。 いくら発情中の阿呆共でも、そんな時にヤるだろうか? 人間の考える事はわからない。 特に、盛りのついたホモの事など。
むさっチュが押し付けるそのゴムを、できるだけ触らないようにしながら観察する。 使った跡は見当たらない。ヤル直前で、落としたか捨てたかどうにかしたんだろう。
「こんなの、俺、初めて見たぜ!!」
むさっチュはとても興奮している。 うまくごまかさなければ、この馬鹿は今後もこの奇妙なモノを探すんだろう。
「よく聞け」
捜しまわるのは構わないが。これ以上こんなモンを見せつけられるのはご免だった。
「そいつは、宇宙人の抜け殻だ」
むさっチュの顔が驚きに強ばる。
「急いで、手ぇ洗って外に捨てて来い。そのぬるぬるした所触ると、ヤツラの病気がお前にうつるぞ」
おろおろとむさっチュの視線がさまよった。 できるだけ恐い顔を保ちながらチューイチはむさっチュに「恐怖」を伝える。
「夜とか、人がいない時にな。宇宙人は脱皮すんだ。そんとき残していったヤツだ。」 「お前、ついてたぞ?まだその辺にいるかも知れなかったんだからな。」 「あいつらは、脱皮した直後腹減らしてるからな。お前ぐらいのネズミなら一口だ」 「大きさなら一緒ぐらいだと思うなよ?ヤツらの先っちょから出る白いのは、肉を溶かすぞ」
いかつい顔したいいネズミの癖に、むさっチュはぼろぼろと泣き出した。
「俺、手ぇ洗ってくる!」
ついでに頭の中身も取り替えて来い。 チューイチは深々とソファにふんぞりかえってため息をついた。 あの馬鹿は。本当に毎日驚かせてくれる。 洗い場へと走っていったむさっチュがつい今まで立っていた場所には 今日拾って来た様々ながらくたが散らばっている。
使い道も、使用法法も、見た目も色もそれほど変わったものはない。 どれもが平凡な日用品。
けれど、むさっチュには魅力に満ちて見えるんだろう。 見るもの、聞くものがみんな驚きに溢れている。 馬鹿は馬鹿なりに人生が楽しそうだなとも思う。 それが少しうらやましくもある。
それにしても、とチューイチは床の上のゴムを見て喉の奥でくつくつと笑った。 ここ最近で一番のヒットだ。 予想や想像を超える逸品。ある意味、トラブルのセンスだと言っても良い。 しばらくはコレを思い出すだけで笑いのネタには困らないだろう。
他に拾って来たらしい物を眺め、残りの品々でむさっチュをどう騙してやろうかと チューイチは機嫌良く考えを巡らせていた。 その内に、中々戻って来ないむさっチュの様子を伺いに行き。
「チューイチ!!!あそこに脱皮したてのほやほやがあんぞ!!しかも、すげえ!どうやって脱皮すんだ、縛ってあるぞ!!!」
むさっチュの興奮した叫び声にチューイチは本格的に頭を抱えた。 1匹では退屈でつまらない毎日が。2匹ではこんなに賑やかになる。
20070404
やまだ
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