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とても、恐い夢を見た。 跳ね起きるなんて若者臭い目の覚まし方じゃなく、汗だらけまま目だけが開いた。 喉が乾いた。乾いた口の中を舌で濡らすとねっとりした感触に眉根が寄った。
うがいしてえ。 でも、面倒臭え。
完全に浮上していない頭の中は、起きるか眠るかの選択に揺れる。 分厚いカーテンからは明かりが差し込んでいる。けれどまだ眩しい程の強さじゃない。 起きるには早い。素直に寝るのも何かがひっかかる。 放っておけばまた沈みそうな意識で違和感をぼんやり探す。 深く息を吐いて、それで全身が緊張していた事に気がつく。
眠いんじゃねえ。 動かねえんだ。
首が重い。手先から足の先まで、指一本でも動かせない。 ただ寝ていただけで。ただ汗をかいただけで。
ただ、夢見が悪かっただけで。
寝ちまえ、と目を閉じてもう一度深く息を吐いた。 ため息のようなその深呼吸の中で寝る、と自分に言い聞かせる。 どんな夢かは忘れてしまった。 目が覚めた途端に記憶の中からそれはかき消えた。 後に残るのは強ばって疲弊しきった体と恐かったという気持ちだけ。
目を閉じたヒル魔の耳に届く音は室外の音ばかり。 新聞配達かランニングなのか、走り去る音。少し遠い自動車の排気音。 室内からは何の音も無い。 ベットの中にはひとりだった。
あいつ、いつ出て行ったんだろう。
仕事柄、何も言わずに出て行く事は多い。 隣にいればうるさいばかりの寝息や歯ぎしりの音にも慣れた。 それが全く無い朝にも慣れた。 いないんだな、と思うと同時に胸を占める感情に苛立つ。
たかが、夢で。 怖がって起きて。 恐かった、と思う事より。
独りでいる事に心細さを感じるようになった。
現実の方がとんだ悪夢だ。
寝ろ、と自分に命じ続けた。 恐怖に強ばり、目覚めで弛緩し、再び眠ろうとしてまたどこかが強ばっていた。 おかしな力が入っている。眠りにつくのが難しくなる。
意識すればするほどに、気持ちを占めるのは喪失感で いないあいつに縋る気持ちだった。 ともすればまだ布団のどこかに残っている温もりを探そうとする手を押さえ付ける。
こんな風に変わっちちまうなんて。
現実の方がとんだ悪夢だ。
やまだ
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