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2000年05月31日(水) きゅうけつきいちーー

耽美な血と言えば吸血鬼。

ヒル魔が吸血鬼なのは既に色々多そうなので、武蔵に吸血していただきましょ。
ずぼらな武蔵は夜行性で、うろうろしてたらヒル魔に会うよ。
血さえ定期的に取っていれば死ぬような事はないんだけど
元来の面倒くさがりととりあえず女には苦労していないせいから
あんまり血を探すのに積極的じゃ無い。

あ、そろそろ血吸わないとやばいかもなーって思った時には女も切れてて
街を歩いてもどいつもこいつも不健康な臭いばっかり。
ふいにみつけた上質の臭いに近寄ってみれば金髪のガリガリ。
あんまり好みの外見じゃねえ。良い匂いなのに気が進まない。
こういう時はやめといた方がいいんだけどな、と思いながらもがぶりでごっくん。

いざとなったら殺せばいいし、一応吸血鬼のはしくれとして
いくつかの催眠手段は持っている。
空腹を満たすだけの血液をいただき、さてと、これからどうするかなと
考えていると腕の中の金髪がうめく。

どうすっかな。

白い顔と脱力しきった細い体。倒れる直前に囁いていた
「てめえ、後で覚えてろ」という捨て台詞は武蔵の耳には新鮮だった。
俺が化け物ってわかれば、こいつはきっと驚くだろうな。

貧血を起こしながらも虚勢を張る人間に、ほんの少しだけ興味が持てた。
面白いから起きるまで待って、何をするつもりだったのか聞いてみようか。
人外相手に、どうするつもりか。気付いていなけりゃ教えてやっても良い。
どうあっても叶わない相手に喧嘩を売った事を、後悔させてから殺しても医良い。

しばらくぶりの良い血だった。
手名付けていわゆる「牧場」に仕立て上げればかなり楽が出来そうだ。
他の同類は「牧場」を育てて生計を立てている。
そのぶん自由も奪われて、やっかいやトラブルも増えるそうだから
武蔵はあまり手を出して来なかった。

何よりこの金髪。見ているだけで不愉快だった。
食指がのらなかった一番の理由は、人を見下すような目つき。
何でも自分は知っているのだと、思い上がっている態度。

「人」では叶わない存在があるんだと、分からせてからいたぶって殺そう。

良い思いつきだな、と思った所で金髪がうめいて目を開けた。
武蔵がそれに気がつくまでの、わずかな間に金属が音を立てた。
がちゃり、という重い音は武蔵の手首を拘束していた。

冷たい、銀色の、見慣れぬ枷。

「…………なんのつもりだ?」
「油断したな、糞ヴァンパイア」

存在するとは聞いていたが、目にするのは初めてだった。
人間が、自衛のために知識を集めて特殊な能力を特化させた「狩」の一族がいるという。

「自分から飛び込んでくるたあ、見事なバカだ」

貧血に青い顔のまま、金髪は見下すように武蔵を笑う。
立場がわかっていないのは一体どっちの方だというんだ。
こんなもんぐらいで拘束出来るとでも思ってんのか?
軽く力を込めるだけで、簡単に弾けてしまいそうな細い金属の見慣れぬ枷は
意味があるとは思えない。立場が分からないのはどっちの方か。
わからせてやる必要があるな。

それまで腕に抱いていた体を武蔵は離した。
落とした、という言い方に近いやりかたで金髪は汚い路地の地面に転がる。
その、右手が鎖の端を掴んでいた。

ふらつきながらも立ち上がる金髪の顔は未だに薄笑いを浮かべている。
武蔵は本能で不快を感じた。こういうやつとは、本格的に会わねえんだよな。

とりあえず、手早く金髪を屈服させようとしていつもと勝手が違う事に気付く。
力のコントロールができない。
体の内側から湧き出るような、力の源が静まったままだ。

「観念しろ。『これ』を腕に付けてる内は、お前はただの人間だ」





吸血鬼を本能的に引き付ける『麝香(じゃこう)』という能力を持つヒル魔。
能力をsu
べて封じられてしまった吸血鬼の武蔵。
「人」としての能力は、武蔵の方が十分勝る。
「人外」としての能力は、ヒル魔の方が十分勝る。

武蔵がヒル魔を腕力だけで倒して逃げる事ができるのか。
吸血鬼が本能的に欲しがる匂いと味を持つヒル魔が武蔵を魅了するのか。

こんな男に屈服なんて死んでもしないと思う武蔵。
殺すのは簡単だけれど、どうせなら下僕にしたいヒル魔。
(ヒル魔は臭いをまき散らすだけであとはひよわなもんなので)
(本当だったら使い魔のように手先になる人外部下が必要です)

さあ、どうなる。


やまだ