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2000年04月29日(土) [赤ムサシさん]2

ムサシさんが目を覚ました頃に。森が大きく揺れました。
久しぶりの地震に森は大騒ぎ。窓から外を見ると、目の前の丘が崩れています。
ムサシさんは、大工道具を手にして外に出ました。
幸いけが人は出なかったようですが、家の傷は見た目ではわかりません。
小さな揺れでも土台がずれていれば大事です。
森の仲間の家を、一件一件見て回ります。

お昼を回ったころに、ムサシさんは気がつきました。
そういえば、ヒル魔はどこに住んでいるんだろう。
ムサシさんは、ヒル魔のおうちを知らなかったのです。
気が付けば、いつもそばにいたからです。
探さなくても、いつも会いに来てくれました。
なのに今日は一度も姿を見ていません。ムサシさんの顔色が変わります。
どこかで怪我をしているかもしれません。
閉じ込められているのかもしれません。

出会ったみんなに、尋ねます。ヒル魔の家を知らないか、と。
みんなが首を横に振ります。
探しているうちに、いつもならひょっこり顔を出すかもしれない。
ムサシさんは一所懸命ヒル魔を探しました。

ヒル魔さんとムサシさんは、この間からおつきあいを始めています。
ほんの、ちょっと前からです。
まだ一緒に遊びにも行っていません。
やりたいことが、たくさんあります。
聞きたい事もたくさんあります。言いたい事も、まだまだあります。
岩の陰。藪の中。期待して覗き込んで、そうして、がっかりして。
その分、ムサシさんは悲しくなりました。
こんなに、会いたいのに。ヒル魔はどこにもいないんです。

とっぷりと日が暮れたころ。ムサシさんはとぼとぼとお家に帰りました。
ヒル魔はどこに行ったのでしょう。
何か自分は気に入らない事をしてしまったでしょうか。
もう、この森にはいないのでしょうか。
重い足をひきずってお家に向かうと。
おや?ムサシさんのお家に、明かりがついています。
胸をどきどきさせながら、ムサシさんは家に飛び込みました。
「遅ぇよ!こんな時間まで、どこ行ってやがる!」
ヒル魔が、いました。
一日中走り回ってくたくただったムサシさんは、よかった、とつぶやきました。
本当によかった。
「怪我してないのか」
「するわけないだろ。あんな地震ぐらいでよ」
よかった。
「ただ、家が崩れちまったからよ」
ぷい、とヒル魔が外を向きます。視線の先に、崩れた丘が見えました。
「しばらく泊めろ」
口の中でちいさくもごもごとヒル魔が言います。
しばらく。一緒に。このおうちにヒル魔が来る。
しばらくって、どれくらいでしょう。
朝起きても、夜、寝る時も。
いつもヒル魔がいてくれるのです。
いっそのこと、ヒル魔のお家を壊してしまおうかと考えました。
そうすれば、ずっと一緒です。
さっきまであんなに悲しかったのに。
こんなに嬉しい事があるなんて考えもしませんでした。
あんまり驚いて、返事も出来ずにいると。
ヒル魔がいらいらと叫びます。
「どうなんだよ!」
かわいいお耳が真っ赤です。
「あ、あ。構わねえ」
本当に?とヒル魔が目で確認します。
不安そうなその様子に、ムサシさんは何度も首をたてに振りました。

これからは、いつも一緒です。もう、一人で寂しくなる事はないんです。
うれしくて、本当に嬉しくて。ムサシさんはヒル魔をぎゅっと、抱き締めました。
「なっ、何しやがる」
「ずっと、ここにいろ」
腕の中で、ぴたりとヒル魔が動きを止めます。
ムサシさんの腕の中からぴょこんと飛び出した耳が、ぴくぴくと動きます。
「もう、急にいなくなるな」
ヒル魔の小さな頭に、顎をのせて。ムサシさんは何度も繰り替えしました。
どこにも行くな。
ぎゅっと、胸にしがみつかれて。ムサシさんは、今日何度目かの、よかった、をくり返しました。

それから。
少し考えます。
今日森の中をあちこち見たけれど。大きく崩れたところは
ありませんでした。一体、ヒル魔のおうちはどこにあるのでしょう。
それとも。
もしかして。

自惚れてみてもいいのかな、と
ムサシさんは思いました。








20050412

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