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ムサシさんが目を覚ました頃に。森が大きく揺れました。 久しぶりの地震に森は大騒ぎ。窓から外を見ると、目の前の丘が崩れています。 ムサシさんは、大工道具を手にして外に出ました。 幸いけが人は出なかったようですが、家の傷は見た目ではわかりません。 小さな揺れでも土台がずれていれば大事です。 森の仲間の家を、一件一件見て回ります。
お昼を回ったころに、ムサシさんは気がつきました。 そういえば、ヒル魔はどこに住んでいるんだろう。 ムサシさんは、ヒル魔のおうちを知らなかったのです。 気が付けば、いつもそばにいたからです。 探さなくても、いつも会いに来てくれました。 なのに今日は一度も姿を見ていません。ムサシさんの顔色が変わります。 どこかで怪我をしているかもしれません。 閉じ込められているのかもしれません。
出会ったみんなに、尋ねます。ヒル魔の家を知らないか、と。 みんなが首を横に振ります。 探しているうちに、いつもならひょっこり顔を出すかもしれない。 ムサシさんは一所懸命ヒル魔を探しました。
ヒル魔さんとムサシさんは、この間からおつきあいを始めています。 ほんの、ちょっと前からです。 まだ一緒に遊びにも行っていません。 やりたいことが、たくさんあります。 聞きたい事もたくさんあります。言いたい事も、まだまだあります。 岩の陰。藪の中。期待して覗き込んで、そうして、がっかりして。 その分、ムサシさんは悲しくなりました。 こんなに、会いたいのに。ヒル魔はどこにもいないんです。
とっぷりと日が暮れたころ。ムサシさんはとぼとぼとお家に帰りました。 ヒル魔はどこに行ったのでしょう。 何か自分は気に入らない事をしてしまったでしょうか。 もう、この森にはいないのでしょうか。 重い足をひきずってお家に向かうと。 おや?ムサシさんのお家に、明かりがついています。 胸をどきどきさせながら、ムサシさんは家に飛び込みました。 「遅ぇよ!こんな時間まで、どこ行ってやがる!」 ヒル魔が、いました。 一日中走り回ってくたくただったムサシさんは、よかった、とつぶやきました。 本当によかった。 「怪我してないのか」 「するわけないだろ。あんな地震ぐらいでよ」 よかった。 「ただ、家が崩れちまったからよ」 ぷい、とヒル魔が外を向きます。視線の先に、崩れた丘が見えました。 「しばらく泊めろ」 口の中でちいさくもごもごとヒル魔が言います。 しばらく。一緒に。このおうちにヒル魔が来る。 しばらくって、どれくらいでしょう。 朝起きても、夜、寝る時も。 いつもヒル魔がいてくれるのです。 いっそのこと、ヒル魔のお家を壊してしまおうかと考えました。 そうすれば、ずっと一緒です。 さっきまであんなに悲しかったのに。 こんなに嬉しい事があるなんて考えもしませんでした。 あんまり驚いて、返事も出来ずにいると。 ヒル魔がいらいらと叫びます。 「どうなんだよ!」 かわいいお耳が真っ赤です。 「あ、あ。構わねえ」 本当に?とヒル魔が目で確認します。 不安そうなその様子に、ムサシさんは何度も首をたてに振りました。
これからは、いつも一緒です。もう、一人で寂しくなる事はないんです。 うれしくて、本当に嬉しくて。ムサシさんはヒル魔をぎゅっと、抱き締めました。 「なっ、何しやがる」 「ずっと、ここにいろ」 腕の中で、ぴたりとヒル魔が動きを止めます。 ムサシさんの腕の中からぴょこんと飛び出した耳が、ぴくぴくと動きます。 「もう、急にいなくなるな」 ヒル魔の小さな頭に、顎をのせて。ムサシさんは何度も繰り替えしました。 どこにも行くな。 ぎゅっと、胸にしがみつかれて。ムサシさんは、今日何度目かの、よかった、をくり返しました。
それから。 少し考えます。 今日森の中をあちこち見たけれど。大きく崩れたところは ありませんでした。一体、ヒル魔のおうちはどこにあるのでしょう。 それとも。 もしかして。
自惚れてみてもいいのかな、と ムサシさんは思いました。
20050412
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やまだ
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