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腹立たしいセーナはムサシィが歩く道に特大落とし穴を仕掛けます。 けれど、おっこったのはヒルイザ。 せっかく、馬小屋のムサシィに会いに行くところだったのに。 一番お気に入りのお洋服なのに。 自分の背丈よりも深い縦穴でヒルイザはべそっかき。 こんな学園の端っこなんて誰も近寄りません。
だけど。一人だけ。 授業をさぼったムサシィが通りかかる。 「どうしたんだ、お嬢さん」 「っ、てめえに、関係ねえだろ!」 「……まあ、いいけどよ。雨降りそうだぜ」 言葉につまるヒルイザ。 「女を、こんな所に置いて行くなんて……てめえ、それでも男か!」 肩をすくめてムサシは手を伸ばす。 どっきどき。はじめて握る手は、なんて大きくて、立派で、逞しくて。 でも、つつしみのある淑女はそんな簡単に手を差し出さなくってよ。 ハンカチを持って、布ごしに手を差し出して。 「………なんだ、結構重いな」 こんな失礼なやつに胸キュンだなんて。 悔しい。そう思ったとたんに、ずるりと手がすべる。 バランスを崩して、穴の中に倒れ込むヒルイザ。その上におっこってくるムサシィ。 折り重なった瞬間、掠める唇と唇。 見つめあう目と目。 ファーストキッスは、土の香り。 「……………お、……重、い……」 必死でそれだけを告げるヒルイザ。うすぐらい穴の底だから、こんなに真っ赤な頬は気がつかれないはずと必死に自分に言い聞かせる。ヒルイザの上にのっているムサシィは、そんな事にきがつきもせず「わりいわりい」と体をどけるものの。 本当は、このまま時が止まればいいのに。 けれど、見つめるその先のムサシィはヒルイザへ目も向けもしない。 「ああー。こりゃ、登れねえな」 穴のふちは、ムサシィよりもずっと遠くに見えた。 「仕方ねえ。朝になりゃ、誰か通りかかるだろ」 朝。朝まで。この穴に、2人きり。 「お嬢さんは嫌かもしれねえけどな」 「あ、当たり前だ!」 ぷいと首をそらすのは、どきどきするこの心を見抜かれないため。 だって。2人きりで。こんなに狭い穴の中で。 「や、役にたたねえやつだな」 震える語尾。こんなに近くでムサシィを見る事になるなんて。 どうしよう。 嬉しい。恥ずかしい。照れくさい。胸が苦しい。 ヒルシィが好き。こんなに、大好き。
穴の形に切り取られた空は、いつのまにか星空が浮かびます。少し、寒い。 ぶる、と震えたヒルイザへムサシィがガクランを放って来た。 「寒いんだろ、それ、羽織れ」 でも。 「いいから、着とけ。お嬢さんが風邪ひいたら大事だぞ」 ムサシィの温もりが残った上着。少し、覚えのある臭い。 「汗臭い」 「わりいな」 「泥がついてる」 「ああ、おっこたからな」 そもそも、こんなところにムサシィがいるのはヒルイザを助けるためなのに。 なのに、一言もそんな文句は言わない、ムサシィ。 とても優しいムサシィ。 「…………ありが、とう……」 「……おう」 羽織った黒い上着はとても大きくて。とても暖かくて。 まるで、ムサシィに抱き締められているようで。 襟が高い上着で助かった。こんなに、顔を赤らめては。いくらムサシィが鈍感とは言え、気がつかれていただろう。 ふと、ヒルイザが顔をあげるとムサシィ視線が注がれている。 「な、なんだよ」 「いや、お前いっつも怒ってるけどよ」 腕を組んで、こちらを見て。 「笑った顔の方が、可愛いぞ」 顔が。火を吹いたのかと思う程に熱く火照る。 何も声が出せない。苦しい。この男の、一言だけで今にも死んでしまいそうになる。 熱い。すごく、熱い。 ふいに、すぐそばにムサシィの手がのびてきた。 いや。見ないで。 ヒルイザは体をこわばらせる。 これ以上、期待させないで。 どきどきしすぎて。おかしくなる。 「雨、降って来たな」 「え?」 顔をあげると、額にぽつ、と雨粒が降って来た。空からの冷たい雫からヒルイザを守るように、ムサシィがその身体を抱き締めてくる。 「きゃっ」 「ちょっと、我慢しろ。こんなところで雨に打たれちゃ、いくらなんでも肺炎だ」 ムサシィの胸に顔を埋めて。ヒルイザは、天にも登る心地。 足下からふわふわと浮き上がるような気分。
どうしよう。どうすればいい?
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雨はひどい降りではないものの、いつまでも止む気配を見せない。 肌ごしに触れるムサシィの胸はとても熱く。手を伸ばした背中は、氷の様だった。 「ムサシィ、俺の事なんて、いいから」 「…………おう」 気のせいか、ムサシィの声も元気がない。 どうすればいい。と、と思った時に。腕にかかる重さが増した。 ずるり、とムサシィの体が沈み落ちる。 「ムサ、シィ……?」 ヒルイザの声にも反応はない。 「ムサシィ!」 額は火のように熱く、思わずヒルイザは手を引いた。 どうしよう。見上げた夜空はまだまだ暗く、空ける気配などまったくなく。 ムサシィの体は凍えそうに冷たいのに。ここには、体をあたためる毛布一枚無いのだ。 思わず涙がぽろぽろと頬をつたいます。どうしよう。 ムサシィが目を開き、少し、笑って。 「泣くな」 そうして。目を閉じる。息が苦しいのか、眉根が寄せられたまま。 自分にできる事は何一つない。ヒルイザは膝の上のムサシィの髪をただ、ただ、撫でることしかできない。 けれど。そうでしょうか。 自分にできる事。 あります。一つだけ。 たったひとつだけ、自分にしかできない事が。 ムサシィの冷えた体をあたためる方法が。
震える指で、ムサシィの肌に張り付いたシャツのボタンをはずし。 できるだけ急いで上半身を裸にすると、こんどはヒルイザの番。ブラウスのボタンをはずさなくては。 震える指。羞恥がその指の先まで、赤に染めてしまう気がした。 何度もためらって指が止まる。 けれど。これ以外に道はないのです。 ムサシィを助ける方法は。これしか。 ヒルイザはブラウスを肩から落とし、その白い裸体を夜気にさらし出した。いくつもの小さな雫が、その薄い体に降り落るけれど、そんな冷たさも気にならない程。ヒルイザの心は震えている。どきどきするこの鼓動で、体が壊れそうな程。 ムサシィのためには仕方が無いと、思っている片方で。ムサシィの肌に触れる期待に震える自分を感じて。 きゅっと、ヒルイザは目を閉じた。 膝に横たわるムサシィの頭を、そっと胸へと抱き寄せた。 唇を嚼み。震えてうまく動かせない両手でムサシィの上体に身体を重ねて。 目を、覚ましてと胸の中で願いを紡ぐ。 月明かりに、ムサシィの目は閉じられたままだ。 ヒルイザはその頬にそっと唇を落とした。 すっかり冷えてしまっている目もと。自分のために、ムサシィがこんな目に。 額に、鼻筋に、そして、最後に唇を。やわらかく、はむように、唇を這わせる。 せめて、暖かさが伝わるように。 目を、覚まして。 名前を、呼んで。 両腕で抱き締めた体が、とても熱い。 目を、覚まして。 抱き締める腕に力を込める。何も望まないから、元気なムサシィに戻って。 堪えきれず、涙がこぼれ落ちた。ぽたぽたと真珠のようなその涙が。 ムサシィの頬に落ちて。そこから、光が弾けました。
驚くヒルイザの視線の先で、ゆっくりと開かれるムサシィの瞳。 「ムサシィ………」 「ヒルイザ…………」 ムサシィの手が、ヒルイザの頬にのび。そうして。ヒルイザは目を閉じた。 触れていただけのムサシィの唇が開いて、ヒルイザの唇に絡み付く。 体勢を入れ替えるようにムサシィは身体を起こし、優しくその身体を抱き締めた。 ガクランの上にヒルイザを横たえ。その上に身体を重ねる。 見上げた先には、満点の星空と、ムサシィ。 その顔が降りて来て、頬に、目もとに、唇が落ちてくる。さっき、ヒルイザがそうしたように。 ムサシィの腕がヒルイザの胸に伸び。その感触に、びく、と体をこわばらせてヒルイザは目を固く閉じた。太い指が、ゆっくりと胸を探る。触れるか触れないかのところで、何度も円をかき。すぐそばを通り過ぎる動きは、なんだかとても、焦れったく。そう思う自分がはしたなく。薄目でムサシィをそっと伺うと、目が合って。 「ひっ……っ……」 きゅう、と突起を摘まみ上げられヒルイザはのけぞった。優しく揉まれ、柔らかくなるかと思ったそこはなぜか指の間で固さを主張し始めまするのがわかる。 「ぃやっ……それ、ゃ………」 「じゃ、これは?」 胸に置かれたのは、ムサシィの片手。その、もう片方は。 ヒルイザのスカートをたくしあげ、足の奥へと進んでいる。 下着の上から熱を持ち始めた先端に触れられ、ヒルイザは息が止まった。 「それ、も……ゃあっ………」 足を閉じようとしても、そんな小さな抵抗は簡単にほどかれる。ムサシィは、下着をずらして逃げようとするヒルイザの中心を握りこんだ。親指の腹でなぞりあげ、先端からこぼれる液を救い取る。手のひら全体にそれをまぶすように塗り込め、滑らかな動きでヒルイザを追い立てていく。声さえもたてられないのか、ヒルイザは何度も仰け反りながら空気を求めた。 胸の突起はぷっくりと腫れ上がり、舌を這わせるとようやく声が漏れる。 腫れて敏感になったそこをいたわるように嘗めてやり、胸が弛んだところで軽く、歯を立てて。 ヒルイザの沿った背中に腕をまわして、綺麗に浮き上がる背筋をなで下ろした。 そのまま、反らしっぱなしの体を片腕で支える。 「ちから、抜け」 ムサシィは、ゆっくりとヒルイザの一点へ伸ばした。 「ぃやっ、………無理っ」 腰から降りて来た指が、尾骨を過ぎるとヒルイザはたまらず腰を揺らす。 ぎゅうとムサシィの首に腕を回し、その胸に自分の胸をこすりつけるのはもう無意識の動き。 はじめて受ける、強すぎる快楽に体を震わせるヒルイザの体をやさしくなでながら、ムサシィは敷かれたガクランのポケットを探った。指先に、軟膏のチューブを見つけて引っ張り出し。 ヒルイザに見えない角度で、それを猛った自身にてばやく塗り付けた。 ふと、視線を感じて顔を上げた先に、不安に満ちたようなヒルイザの視線とからみ合う。 「………恐い、か」 ごく、とヒルイザの喉が動くのが分かる。 そして。首が左右に小さく揺れ。欲に潤んだ目もとが、真直ぐにムサシィを見ている。 「ムサシ…と………、一つに、なりたい……」 ますます赤く染まるヒルイザの頬。薄暗い中でも、はっきりとわかる可愛らしい、人。 「力、抜いとけ」 体温で溶けた軟膏を指先に取り。ムサシィはまだ、誰にも触れられていない蕾みへゆっくりと侵入させる。 「くぅ……っ……」 入ってくる感触に、ヒルイザは息を呑んだ。強ばりをほどこうとムサシィが熱いヒルイザのそれに指をからめ、ゆっくりと上下に揺すった。 「ひっ……、ぁんっ………」 つぷ、と2本目を沈ませながら。手のひらの中で震えるものの先端に、指を這わせる。 確実に、快感を与えてやりながら、後ろの蕾を広げて行きます。傷つけないように、できるだけ優しく、それでもできるだけ急いで。内部を探る指で、できるだけヒルイザが喜ぶ場所を探しながら。 3本目を受け入れる頃には。ヒルイザの体ががくがくと震えました。 「ムサ、シ……」 未知の感触に強く快感をあおられて、ヒルイザは目を瞑りました。 「はゃ……く………」 指が離れて、ムサシィの両腕が腰をしっかりと支えます。 ヒルイザは再度腕を伸ばした。離れたく無いという気持ちで。全部を、ムサシィに託す気持ちで。 確認するように入り口にぐ、と押し当て、ぎゅっとヒルイザが目を閉じるのがわかり。 ムサシィは腰を押し付けた。 「っ、んんっ………!!」 ゆっくりと侵入してくるムサシィは、想像以上に熱くて。指などより、ずっと太くて。 見開いた目尻から、ぽろぽろと涙が落ちる。 無意識のうちにムサシィの背中に爪を立て、いくつもの赤い筋を残していた。 どこかで、ぱさりと。花が落ちる音。 根元まで押し入れたムサシィは、息をつきいた。思った以上に、狭くて、熱い。 異物を吐き出そうとするきつい締め付け。絡み付き、震えつつ、受け止めてるその場所。 衝動的に腰をがんがんと打ち付けそうになる自分を、なんとか押さえて。汗に張り付いたヒルイザの前髪を払った。 「大丈夫、か………」 声にならないのか、ヒルイザの唇だけがぱくぱくと動く。 『う・れ・し・い』 その、唇に引き寄せられるように塞いで。ムサシィはできるだけゆっくりと腰を使った。 指で確認した、一番ヒルイザを泣かせる場所を擦りあげながら。 「ゃ…、ぁっ………、んっ…」 刺激の強さに、口端から音が漏れ。そのくぐもった喘ぎが更にムサシィの動きを招く。できるだけ深くを小さく突き、抜けるまでゆっくりと腰を引き。身体のこわばりがほぐれたところで、再び根元までを突き入れた。 「ひっ、……ああんっ……」 首を振って刺激をやりすごそうとしているのだろう。ヒルイザの喉からは掠れた音が止まらない。いつの間にか、ヒルイザの腰がムサシィのそれに合わせるように揺れ始めた。 体内で、軟膏とムサシィの体液ぐちゃぐちゃとかき回される音が、脳を揺らす。腰にはりついた重い痺れが、突かれるごと全身を走る。つま先までそれは伝わって、ヒルイザの脳裏を一色に染めあげる。 視界が何度も白く濁って、飛んで、はじけるとムサシィの顔が浮かび上がった。 その口から、自分の指がのびていて。突かれるごとに指が、ムサシィの歯に噛み締められて。視界と刺激から倒錯した快感に息が止まる。 気を保っているのかどうかも分からない中。膨れて暴れていた痺れも、疼きも、快も全部が。 喉の奥から競り上がる錯角。 「ぁ、イ…ィっ……ム…サシ……」 ヒルイザが弾ける前兆を感じて、ムサシィは動きを速めた。 「ィけ……、イっち、まえ……」 浮き上がったヒルイザの両足がムサシィの身体をぎゅうと締め付け。 「ひ-------っ、っ、……!!」 互いの腹の間で、ヒルイザが弾けた。びく、びくと痙攣しながら何度も白い液が腹に散り。 その、余韻に震える身体に。ムサシィはすべてを叩き付けた。
ぐったりとした身体を腕に抱きかかえ、ムサシィは息を吐いた。 手持ちの服で綺麗に整えてやったが、それでもヒルイザは目を覚ます様子はない。 そろそろ夜も明るく白み始めている。どうにかしないと。 どうにか。できないものか。 周りをぐるりと囲む土の壁が恨めしい。苛々ともたれ掛かり、空いた手でその土壁を殴りつけた。 と。 ぼかりとその叩き付けた部分の壁が崩れ落ちた。 驚いて身体を起こすと、腕の中でうう、とうめき声があがる。 目があって。恥ずかしそうに顔が背けられ。恐る恐る振り返ってくるその視線を追い掛けて強引に唇を合わせた。 「んっ………」 そのままで目が合い、目が伏せられる。情交の余韻とは違う赤みが、頬に刺した。 可愛いなと、思いながらムサシィは乱れてしまった髪を撫でる。唇を離すと、すぐに俯いてしまう顎に指を伸ばして、もう一度目を合わせる。 おずおずと、視線がこちらに向けられた。その、弱々しさの中にあるものがけして嫌悪では無い事を知り、ムサシィは少し笑ってみせた。 まだ、正面から目を向けられないヒルイザ周りを見回し、そして、今開いたばかりの横穴を見つけた。そこから漏れるわずかな明かり。 汚れたスカート一枚を身にまとうだけのヒルイザはムサシィに身体を支えられながらその奥へと移動した。
そして。 その奥からあがる、声。 「ようこそ、ダーマ神殿へ」 言葉を失う2人に、数人の神官が手に布を持ち近付いた。 白い光沢のある布が巻き付けられ、顔を見合わせる2人前に黒い板が降りて来る。 そこに書き記される文字の羅列。 「これは……」 「転職をご希望ですか?お望みの職業をお選び下さい」 「望みの?」 「そう。どうぞ、思うままの人生をお選び下さい」 2人は顔を見合わせた。 「あなたは何を望みますか?」 どちらともなく、2人は手を繋いでいた。 黒い板に刻まれたたくさんの肩書き。そのどれも、2人の目には入らない。 ただ、お互いを見つめるだけ。 ムサシィは、神官に告げる。 「俺は、このままこいつといてぇ」 ヒルイザは小さく俯き、耳を染めながらその言葉をくり返す。 「てめぇがいれば、なんだって……、構わねぇ」 その2人に、神官は結論を出した。 「なるほど。2人のご希望を取り入れましょう」 神官はその後言葉を繋ぐ。 「2人を、教会に。彼らは学生から、夫婦へと転職します」 あたりに満ちる、柔らかな祝福の鐘の音。 東の空が白み、2人は色とりどりのガラス越しに朝陽を浴びた。 「…………幸せに、する」 「当たり前だろ」 ムサシィに優しく抱き締められる事に嬉しさを隠せずヒルイザはその腕の中に身体を預けた。 この男を。幸せにしてやりたいと思った。
神官の言葉に耳を傾けながら。 爽やかな朝日の中。2つの影は、1つに重なり。いつまでも離れる事はなかった。
20050507 あー。こんなに長くなるなら最初からヒル魔とムサシで行けばよかった。 ヒルイザってなんかルイを連想させる。 >>[完結編] <倉庫にモドル>
やまだ
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