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02付属品をご確認下さい。
名前は、ヒル魔。長いこと倉庫に眠っていたところを、俺がわざわざ掘り起こしたんだそうだ。 年代物の高級品で、今時の量産型にはない気品や機転の早さを身につけている、んだそうだ。30分程の会話の中で、こいつには逆らわない方が良さそうだと、判断する。 「……で?あんた、何がしたいんだ」 「いや、別に……」 「何で俺を選んだんだよ」 「古い電話が欲しかったんだ」 「はあ?」 また、機嫌を損ねるような発言だったかなと思ったが、この言葉に奴は怒らなかった。 「あんな、いろいろごちゃごちゃしてるんじゃなくてシンプルな電話が欲しかったんだ」 「確かに、な。さぞかし今の新機種にゃあ、必要ねえもんがごちゃごちゃしてんだろうな」 うなずきながら、ヒル魔は自分が入っていた箱の中身を引っ張り出し始める。 「俺を選んだのは、間違ってねえぜ。そいつは保証するさ」 「……そういうもんか」 「そういうもんだよ」 梱包材が勢い良く箱から引き出されて、下からいくつかの小さな部品がぼろぼろと引っ張り出された。 ムサシにはよく分からない部品を一つ一つ確かめ、数を確認すると気がすんだらしく箱が部屋の隅へと押しやられた。もう、何も言えず、ただヒル魔の様子を見ていたムサシは、ため息をつく。片付けるのは、俺の仕事なのか。 セナや栗田が持っていたケータイは、やってくれと頼めば掃除でも何でもすると言う。こいつもそうならば、この荒れ放題な部屋を片付けて欲しいものだが、とてもそれを試してみる気にはなれなかった。 「おい、電話あるか?」 「そこに、置いてある」 かさ張る梱包材を束ねながら指差した先で、怪し気なケーブルと機械が繋がれてゆく。止める気にもなれず、黙々と部屋の掃除を続けること、10分。おい、と声を掛けられ振り向きざまに何かを放られる。 「電話だぜ。こっちの中のメモリーは全部入ってる。今すぐ使える上に」 手のひらに治まるサイズの小さな機械は、雑誌で見た通りの前々世代型だ。 「金はかからねえ。好きに使え」 「どうやって使うんだ?」 「かせ」 自分の太い指では同時に押してしまいそうな小さなボタンの上を、細い指が器用に動く。爪の色が薄い桃色だったり、指の節が薄かったり、見ていて飽きる事がない。起動した今じゃあ、体温があって、弾力さえありそうな気がした。 「おい。聞いてんのか?」 「いや」 同時に。勢い良く臑を蹴られて声がつまった。 「ふざけんな」 すぐそばから見上げてくる額を、金髪がさらさらと流れた。その下の睨み付ける眼が、やけに生々しくて作り物だと言う事を忘れてしまう。いや、そもそも、人間にここまで逆らう機械があるとは、思えない。 ムサシは、何の気なしにヒル魔の頬に手を当てた。手のひらに伝わるほんのり暖かな頬は、想像より随分と柔らかい。親指で頬の一番高い部分をなぞると、驚きに見開いていた眼が、忙しくまたたいた。顔色が、先ほどより少し白くなり、さっと赤みがさしていく。ケータイそのものをこんなまじかで見たのは初めてだったが、実は人間なのだと言われても自分は疑わないだろうと思った。 「おい」 「ん?」 その言葉に顔を向けるのと、殴られるのとは同時だった。痛みよりも衝撃の方が強い。 「何しやがる、糞変態!」 「何、って。」 「じろじろ見ると思ったら、てめえそういう趣味か」 殺気に近い物を感じて、ムサシは手を離した。 「手ぇ出してみろ。後悔させてやる」 そういう事が、可能なのか。尋ねそうになって、やめた。 「すまん、触ってみたかったんだ」 ぎりぎりと音がしそうなほどの眼が、ふいと反れ、ずりずりと足だけで床の上を移動する。十分に距離がとれたところで、そばに落ちていた段ボールのかけらを投げつけられた。 「近寄るな、ど変態」 変態……。そうか。俺は変態なのか。 軽いショックを覚えつつ、床に落ちた携帯を拾った。小さな液晶に映る文字が操作を補佐しているので、説明がなくとも電話をかける事ぐらいはなんとかなりそうだ。画面に出てくる見なれた名前を選べば良いのだろう。 うつむいていじっているうちに、ヒル魔が立ち上がる気配を感じる。 「……どうした」 部屋の中央で腕を組んで室内を見渡すヒル魔は、不機嫌そう呟いた。 「何もねえじゃねえか…。外につながってる端末、ねえのかよ」 「ああ」 パソコンがないのは当然で、テレビやあらゆる家電が、いわゆる「単品」扱いとなっている。どうにも好きじゃない上に、安くすむという理由で、ネットワークには繋がない生活だ。 「見事に何もねえな。こりゃ、良い」 同じような古い携帯をいくつかヒル魔はジーンズのポケットにねじ込むと、玄関へ向かった。 「どこ、行くんだ」 「このままじゃ、何もできねえだろ。買い物だ」 一瞬、そのまま家に帰ってくれるのかと思ったが。そうか。買い物か。 「靴、借りるぞ」 一言告げるて、ヒル魔は外に出て行った。 後に残された大量のゴミに囲まれて、ムサシはため息をついた。外側の梱包には機種番号とメーカー名が大きくプリントされている。せめてそれだけでもメモを取ろうかと思ったが、それをどう利用すれうばいいのかがわからず、手を止めた。 そういえば。あいつはまがりなりにもケータイのはずだ。 最低でも人型な分、ネットにつながるだろうし、もちろん通話機能だって当然あるはずだ。 なのに。 ムサシは手のひらに視線を落とす。
あいつ、なんでこんなモン持ってるんだ?
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やまだ
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