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| 2000年01月21日(金) |
男の身体の☆声が漏れ |
ベットの上に身体を横たえると、さすがに今まで以上の音がした。 二人分の体重に文句を言うようにぎいぎいと軋むその音が部屋の外に聞こえているのでは無いかとひやりとする。窓があいている部屋は、家の中では端に位置しているらしかったが、それで気が休まると言うわけじゃ無い。 武蔵がおおいかぶさって、気にとめる様子も無く服の下に手をのばすのは音が漏れないと知っているからだろうか? 今までも、こんなふうに連れ込んでいるから。その経験からこんなに余裕でいるんだろうか? 顔を覗き込まれて、諦めたように目を反らした。 「何だよ」 「別に……」 「また、つまんねえこと考えてるのか」 「……………別に」 「音、外に漏れるのが嫌か?」 良いわけが無いだろうと怒鳴り付けたくて、無自覚そうな顔を睨み付ける。 「じゃあ何かしゃべってりゃいいだろ」 器用に服の下で指に動き回られて、ヒル魔は言葉につまった。 シャツで隠れて見えないはずの突起が簡単に探られて突かれる。 こんなに明るい中では、反応全部がきっと丸見えで。その明かりと耳にひびくぎいぎいとした音がどうしても気になって。ヒル魔は片手を目の上にのせた。見られる事から、逃げるように。追い掛けられる視線を、ごまかしたくて。 「最近、機嫌良いって聞いたぜ?」 円を描くように指先が揺れて、じわりじわりと追い立てられて。 声を出すまいと唇を引けば、からかうように爪をたてられた。 「っ……なっ………」 「なんか、良い事あったのかよ」 「何も……」 「じゃあ、なんで噂になってんだ」 きゅ、と摘まみ上げられて息が止まった。 声を出さないなんて、絶対に無理だ。 「知ら、ねえ……」 「ふうん…………」 摘まれたまま揺すられて、咽から掠れた空気が漏れた。 空いた手で、シーツを握った。 「男でも出来たか」 「なっ………」 強く掴まれて、息が止まる。 「じゃ、なんでだ」 ぎりぎりと強まる指の圧力に痛い、と言えば歯止めがきかなくなりそうで。 刺激をやりすごすために息を止めても、強弱をつけられて腹がひくひくと揺れてしまう。 こんな、事を。 他の男と、できる訳が無い。 指が弛んだ隙に胸に溜まった空気を吐き出して、荒く呼吸を整える最中。今度は逆がいじられる。 「なあ」 諦めたヒル魔が答えを口にするまでそれはくり返されて。途切れ途切れの言葉に、ようやく満足した武蔵が胸までシャツをめくりあげた。 だって、お前が。お前の噂が、良いから。 「嬉しかったのかよ?」 口元を押さえながらがくがくとうなずくヒル魔は、ぷっくりと腫れたそれを柔らかく嘗めあげられて小さくのけぞった。ぎい、と耳ざわりな音がして、動きさえも縛られる中で。 せいいっぱい背を反らせて声を殺す。楽し気に笑う武蔵の息づかいさえも、もどかしいほど高ぶった身体には刺激でしかなく。口に当てた自分の手が、よだれで濡れていく様さえもわかる日の光に。 ああ、と胸の中で何度もくり返した。 酷い。酷いと。 なのに、こんなにも気持ち良いと。 ベットの上では、酷く武蔵の匂いがきつくて。横たわるだけで、うっとりと身体が痺れて。 全部を忘れてしまいたいのに視界は明るく、音はうるさい。 廊下を歩く人の気配は、いつまでも途切れない。 会話が漏れ、部屋の前でそれが止み。嘘のようなその状況の中で、確実にいつも以上に行為に酔っている自分。
いつもよりしつこい程に時間をかけて上体を触れられて。とうに下肢は熱を持っていた。 「うっ……」 ジーンズの布地を下から押し上げる部分を指で擦られ、耐えられずに声が漏れた。 二本の指の背で、形作る両脇をゆっくり下から上へとなぞられて。もどかしさに腰が揺れる。 「きつそうだよなあ、ここ」 わざわざ確認するように、告げてくる声。 「もう、濡れてんじゃねえのか?」 どう答えればいいのかわからなくて、ただ首を振った。 「このままじゃきついよなあ」 ぎり、と顔をおおう腕の下から睨み付けても気にした様子もない。 その先に自分が口にする言葉を待っている。言わされてしまう事も、分かっている。 「どうしたい?」 ひどく焦らすだけの刺激に反射的に腰が動いて、笑いが深まる。 「わから、ねっ………のか…」 「知りてえな」 指はその鈍いほどの動きを止めない。 「どうされたいんだ、あんた」 「どう、って……」 「あんたが喜ぶ事、してやりてぇ」 見下ろしているのは、嘘をついている表情。 「これは?」 「んっ………」 「こっちか?」 「…っ、あっ……」 「どれがイイ?」 指が布の上を動くだけで、いいように嬲られている。わかっていても、逆らえるはずが無い。 強い刺激程、逃せない熱を感じて大きく身をよじり。耳障りなベットの音が、そのまま感じる刺激の強さを武蔵に伝える。 「ぬっ……がし、てっ……」 「どれを」 「ぜ……全部……」 「どれ?」 「ジ……パンと……、っ……」 ファスナーが下ろされて、ずるりと引き降ろされる開放感に大きく息を吐いて。次を、と促されるから熱に浮かれたふりをする。 「下……ぎ、も………」 よく出来たと誉めるように唇をなめられた。脱がされた下着が、ジーンズと同じように床の上に放られて。 ぼんやりとそれを眺めて、目を疑った。 部屋のドアが、開いている。わずかではあるけれど、確かにこちらにむけて、開いている。 その、奥に。感じられる人の気配。 「武蔵っ……ドア…」 「あ−−?ああ、開いてるな」 さらりと言われる事に、ヒル魔は言葉が続けられなくなる。 「立て付け悪いんだ」 「誰か、いる……」 「そりゃな、いるだろ」 「どうして……」 とたんに声を小さく潜めたヒル魔に、笑いで返してくる武蔵が信じられない。 「俺が仕事休みって事はな」 隠す事もできなくなった下肢にゆっくりと直に触れる指が、ゆるやかに動きはじめる。 「家の奴ら全員、休みってことなんだよ」 知ってて。何もかもわかっていて。それで。こんな。 抗議の声を、あげる前に。手のひらで強く握りこまれて身体がのけぞった。 ドアの外からは、動かない誰かの気配。 見られている、聞かれているというその現実に。焦らされた身体が一層疼いた気がしてヒル魔は打ち消すように頭を振った。 「俺とやってるのが、知られるの嫌か?」 こんな、状況で。どうしたって否定できない状況で。 ようやく、本音をちらりと見せる卑怯な男。 お前なんて、大嫌いだと言えればどれ程楽になれるだろう。 ぐちぐちと音をたてるように先端を弄られて、こらえきれずに悶えればベットが音をたててそれを教える。 武蔵に。ドアの向こうにいる、人物に。 酷い、酷いと言いたいのに。口から漏れるのは押さえた喘ぎばかり。 触られているだけで、こんな有り様で。この先を考えると恐ろしくて。自分を押さえれないだろうと思う、その予感に。弄られる先端からとろりと液がこぼれて武蔵の指を濡らしていく。 奥の入り口が触れられて、濡れた指が慣れたように潜り込み。 押し入られる異物感を呻く事も出来ずに受け止めながら、どうすればいい、とそればかりを考えていた。
声を出したく無いと言うヒル魔の要求に。武蔵はゆっくりとつきあった。与えられる愛撫は優しく、ゆっくりとくり返されて、小さな刺激ばかりが与えられる。ヒルをおもいやっての事でないことは、嫌でも分かった。 身体に武蔵が侵入して。それでも。 そのゆったりとした動きは続けられる。嫌がらせのように、のろのろと、ただ、絶えまなく。 くり返される刺激にヒル魔はこぼれてくる涙を押さえられなかった。
どろり、と腹にたまった物。 武蔵が揺する腰の動きにあわせて、それは腹の中でのろのろと動く。 擦れる刺激は息を止めてやり過ごせても。 内側から腹に響くそれは。声を飲み込もうとする意識を内側からゆるやかに崩していく。 軽く、小さく揺すられて、やりすごそうとする気力が薄く削られて溶けていく。
声に出せない快感の苦痛。
腹筋の下で、背筋の奥で、焦らされる程に高められた疼きが揺れる。 粘り気と重力を帯び、気体にも似て内側で膨らんで解放を叫ぶ。 濃密に溜まるそれは腹部で液化し、とろりと揺れる。揺れて、囁く。 この先を知っているだろう、と。 それがどれだけ気持ち良いのか、お前には分かっているだろう、と。
軽く突き上げられるだけで腹にたまったそれらは一気に背を駆ける。 指の先まで突き抜けて、もっと先へ行きたいのだと暴れる。 耳の後ろをちりちりと焼き、肌の全部を逆立てる。 目の前を真っ白にするまでの、武蔵に追い立てられる登り道。
知っている、だろうと。 腹に響く、のろりとした刺激。 十分に高まった熱は食いしばった唇の端から唾液と一緒にわずかに洩れる。 動きをとめてこちらを伺う武蔵は、ヒル魔がせがむのを待っている。 人前で。昼間から。あられもなく、武蔵を欲しいと叫ぶまでを。 そうして、よがる自分を笑うんだろう。 そんな扱いへの不満も。意地も。羞恥も。意識して、手放していく。 武蔵にせがんで、縋るために。 ちらりとドアに目を向ければ、はじめの頃よりも広く開いている。 その奥に誰がいるのかは相変わらず見えないままで、朦朧とする意識はそこから時折話声を拾った。 複数いるような、その気配を無視する事などできるわけも無い。 けれど。 身体はもう待てないと主張する。
そして。 口を開く。 切れ切れに、片言。 聞こえないと言われて、何度も繰り替えさせられる。 もつれる舌で。何度も。 もっと動いて。 めちゃくちゃにして。 もう、許して。 言う程に武蔵の笑みが深まって、力の抜けた両腕が頭の上に押し上げられた。 腰に当てられていた支えがなくなって、不安定になったまま。 無造作に腰を強く突き出されてヒル魔は欲しかった刺激に強く仰け反った。 「あ−−−−っ」 武蔵の両腕は、ヒル魔の腕を固定したまま動かない。 宙に浮いた腰から下は支えられないままに突き動かされて、激しい動きにだんだんと姿勢が崩れてしまう。 ドアが大きく開いた気がした。 大きく揺すられて。突かれても。崩れる体位にじれったさは変わらなくて。 ヒル魔は両足を武蔵の腰に巻き付けた。 シーツに押し付けられた両腕の変わりに。抱き着きくように、腰から下で武蔵を引き寄せる。 自分のとった姿勢に、恥じなどを感じるよりも。待っていた刺激の連続に背から脳がびりびりと焼けた。 「あっ…、ひっ………、っ…、あんっ…あっ……」 突かれる動きにあわせて、淫らに腰を押し付けて。 視界に入ったドアは、さっきよりも幾分大きく開いているような気がした。 でも、それもどうでも良かった。 「んっ…、ああっ……、む、さしっ……」 「下の、名前だ」 「あっ……ん、、やっ……、ひっ……」 言われた事に、とっさに滲んだ意識がついていかない。 揺れる視界の中で、武蔵を探した。目の前でこちらを見下ろす、上気した顔に抱き着こうとして腕が動かない。 嫌だなと思う事さえ、揺すられるうちに千切れて消えて、仰け反る強さで腰にしがみついていた。 下の、名前。 ぼんやりと思ううちに声が先にその名を呼んだ。 「あっ……、やっ………、げ、んっ……っ」 叫んだ言葉に、武蔵がどんな表情を浮かべたのか。もう、ぼやけた視界で確かめる事は出来なかった。
可哀想だなあ。 あんたは。
自分が言ったままに、なんでも言う事を聞いて痴態をさらけだす身体に。 見下ろしながら妙に冷静な部分がそう感じていた。 腕の中で声を上げてよがる娘を、狭い視界で眺めて、笑う。 お前の事なんて好きじゃ無い男に、こんな目にあわされて。
背中に感じる視線と気配に、満足する自分。 さんざん定食屋の娘の噂をしていた、あいつらに見せつけることでの充実感。 治まっていく不快感と、首をもたげる不信感。
嫌だなんだと泣きながらも。結局言われるままに応じる娘が、目の前にいる。 あんたは。誰にだってこうなんだろうと言ってやりたくなる、暗い感情。 俺とつきあう以外に、何人を銜えこんでいるんだと聞きたくなる程情事に溺れる身体。 腰に巻き付く足の強さに。突き上げに答えるように押し付けられる腰の動きに。 始めての相手は俺だと言われて。他に誰とも寝ていないと言われて。 知り合ってまだほんのわずかな時間しかたっていなくて。 誰がそれを信じられるだろう?
「げ……んっ……、イ……くっ……」 その言葉と表情に、大きく腰を揺らして押し込む。仰け反った身体に、白い液が顎まで飛び散り。 ぎゅうと締め付けてくる感触に思わず呻きがこぼれるた。 その狭く熱い中に、武蔵は高まっていた全部を吐き出した。 娘が脱力するまでに。数回腰を揺らして、全部を注ぎ入れる。 思った通りに、娘の目が閉じると同時に身体がベットに沈み込んだ。
乱れたシーツの間で身動きしない身体から、ずるりと萎えた自身を引き抜いた後。 武蔵は意識のない娘に唇を落とした。
この手が、他の誰かに伸ばされていたら。 それを、目の当たりにすれば。娘が否定しなければ。 自分は平静でいられるだろうか。
感情の名前は、独占欲。支配欲。 熱が急速に冷めて、眠気が緩やかに襲ってくる。 手に入れたと言う達成感と、追い求められる満足感。
それと、少しの何か。 まだ、名前もつけられていないそれを武蔵は押さえ付けた。 ぴくりとも動かない娘は、どうやら完全に落ちてしまったらしい。 汗を滲ませた額にはりついた前髪をそっとはがしてやる。
ほんの少し、距離が縮まったと思った事は何度かあったものの。 優しくなれると思った感情は、うまれてすぐに泡のように消えた。 覗き込めばそこにあるのは、深い穴。 見下ろす自分でさえも、中が見えない暗い井戸。
愛しいと思うのとは違う。優しくしたいとも、思えない。 口には出来ても、心底好きだとも感じる事はない。 ただ。離れる事だけが、許せない。 自分以外の、何かに。誰かに。全部に。 考えただけで、不愉快になる。 少なくともこれは、恋愛感情という呼べる何かではない。
可哀想にな、と思う。 随分酷い目に合わせていると思う。 甘やかすお前が悪いんだとも思う。 意識のない娘になら。優しく出来るのになと思う。
目がさめれば、娘は何を思うだろう。 お前が誰のものになったのか。 家の中の全員が知っているだろう事に。 明日になれば、常連達の間にも広まるだろう事に。 それでいい。 少なくとも、自分の中では片がつく。
娘は、武蔵に惚れていると。 それが周囲に事実として伝わるだけで、十分だ。 俺がこの娘をどう思っているのか。 そんな事は、関係ない。
自分を甘やかしてくれる腕。 無条件に待っている存在。
それは欲しかったもの。 だけど。 代価に恋や愛だのを求められれば。 手放さなくてはならないのだろうか。 手ごろな、恋人。手を伸ばすだけで喜ぶ娘。
代価が欲しいと言われるのが怖くて、 いつも口を開く前に先手を打っている関係。 けれど、その目がよそを向く事が許せなくて。 例え噂だけでも不愉快になって。押し付けるばかりの自分の浅ましさがみっともなくて。 結局娘に八つ当たる。
少し、疲れた。
体をずらして、娘に体重をかけないように体を横たえて。 武蔵は目を閉じた。
少し、眠るか。 目がさめても、どうせ何も変わっていないだろうけれど。
だいぶん、疲れた。 楽になりたい。
答えはもうとうに出ている気がしているけれど。 気にそぐわない結論が目の前に突き付けられそうで。 武蔵は、ため息と共に目を閉じた。
20050718 0215
やまだ
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