言の葉孝

2013年05月07日(火) 職人の涙と消費者の価値観

 ツイッターで「職人さんの心を傷つけ、涙した一言・・・・」と題されたブログ記事が紹介されていた。とある職人が工房でしている仕事を見せながら商品を販売していたところ、「同じようなのがリサイクルショップに行ったら千円でたくさん転がっている」と言われたのだそうだ。
 何十年も修行して積み重ねてきた仕事が安い投げ売り商品と同じだと言われれば悔しがって当然の話だろう。しかしそれは真実をついた一言かもしれない。

 リサイクルショップの中古品価格は参考にならないが、例えば一カ月かけて焼いた皿が百円ショップの皿と同じ種類のものならば、それは当然比較対象になるだろう。そして客から見て同じ品質にしか見えないものは、同じく百円の価値にしか見えない。ただし、その皿に描かれた絵の緻密さや絶妙な焼き加減に気付く人がいれば十万円でも売れるかもしれない。そこに作るのにかかったコストや技術は関係ないのだ。そしてこの場合、職人の仕事を百円に見せているのは百円ショップの皿である。

 今や人の価値観は明確な差異でしか、物の価値を計れなくなったのではないかと思うと、営業職で利益の薄さに嘆く筆者としては、有り難いはずの百円ショップが恨めしい。

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