数日前から、ハナビが発情期に入っているらしい。今日などはものすごく切なそうな声で鳴いている。ああいう鳴き声は、いつもエリーの散歩のときなどに野良猫のものを聞いていたのだが、ハナビのように身近な猫が発情期に入るのは初めてなので、いつもとはぜんぜん違う鳴き声に少々戸惑いを感じざるを得ない。
その様子を見て、母は少々悔しく思っているらしい。話を聞くところによると、猫は初めて発情期を迎える前に、去勢あるいは不妊手術をしておくと、さまざまな病気にかかる確率が圧倒的に下がるらしいのだ。その機会を逃したのだから、口惜しい気持ちもわからないでもない。 しかし、時期を逃してしまったのも理由がある。ハナビは妹に拾われた当時、片目をシュンマクに覆われており、それを除去した関係で不妊手術が送れ、この春の発情期に入ってしまったのだった。
その鳴き声をどう受け取ったのか、エリーがやたらハナビの顔を嘗め回し、現在ハナビの顔はエリーのよだれでベトベト。人相―――いや、猫相というべきか―――が大分違ってしまい、声も顔もまるで“別猫”のハナビ。早く発情期を抜けて元に戻ってほしいものである。
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