さかざきが綴る「アンティークな日々」
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2005年10月20日(木) 奇跡の生還

 私達には定休日がありません。ですから、フェアのお仕事があるときは、ひたすら働き、フェアが毎週のように続くと「あれ、今月お休みが無かった!」なんていうこともままあります。また、フェア以外の時は、商品をお手入れしたり、お値段を付けたり、ホームページの作成など、こちらも「終わりなき戦い」という感じなので、休めるときに思い切ってお休みをしないと、ついダラダラといつまでもたっても休むこと無く仕事をしてしまいます。

 そんな訳で、今日は思い切ってお休みを取って、信州へ日帰りで行ってきました。実は、先日の上高地旅行で、河村の山好きの血が騒いだらしく、「山に行きたい!山に行きたい!」と彼はガイドブックまで買って下調べをしていたのでした。
 今日行ったのは長野県の中央アルプスのひとつ木曽駒ヶ岳、買付けでもないのに朝5時に起きて出掛けました。中央道で約2時間、駒ヶ根I.C.で降りてしらび平まで。そこでバスに乗り換えて駒ヶ根ロープーウェイへと向います。ロープーウェイでいっきに標高3000メートルまで。山は既に晩秋、美しい紅葉を目にしながら、千畳敷へと上がっていきました。



ここが千畳敷カール、太古の昔、氷河によって出来た地形なのだそう。これを越えたさらに向こうに駒ヶ岳の山頂があります。

 ところで、私は登山は初めて。全くの初心者です。ただし、その昔高校生だった時代に(本当に昔ですね。)ボートのインターハイ選手としてカゲキに運動をしていたことがあり、体力だけは自信あり。いまだに高校時代の友人に会うと、「あの頃アンタ狂ったように運動していたよね。」と言われるほど、雨風を問わずボートに乗り、トレーニングではバーベルを上げ(!)、長距離を走っていたので、ほとんど運動をしなくなってしまった現在でさえ、妙に体力だけは自信があるのです。



この日の天気は、珍しく快晴。遙か南アルプスの山々のさらに向こうには小さく富士山の山頂も見えました。画像の向かって右側の山の端に小さく霞むように見えるのが富士山です。

 その日、河村には「大丈夫。3時間ぐらいで帰ってこれるから。ハイキングみたいなものだよ。」と聞かされていたのですが…。現実は大間違い!岩がゴロゴロした登りの道は、すぐに息が上がって、心臓がバクバクしてしまいます。「もう駄目!」とばかり休み休み行くので、なかなかたどり着きません。河村から「もうすぐだよ。山頂に着いたら、おにぎりをあげるからね」とにんじんをぶら下げられた馬のように、おにぎり欲しさに必死の形相で登ります。



駒ヶ岳山頂からは御嶽山も見えました。霊山と呼ばれる御嶽山。本当に神が宿っているように見えました。またいつか行ってみたいです。

 登り続けること2時間ほどでしょうか。ようやく山頂に着き、河村お手製の「ひじき梅しそ入り玄米おにぎり」にありつくことが出来ました。山頂でいただくおにぎりの美味しかったこと!山登りをしてすっかりおなかがすいた私には、玄米おにぎりが体に染み入るように美味しく思えました。



のこぎりのように切り立った斜面。「すごい斜面だなぁ。」とのんきに見ていたのが、まさか自分が登ることになるとは…。

 このまま山頂を後にして下山すれば良かったものの、河村が「次はあの山に登って帰ろう。」と魔が差したのが、私達の恐怖の始まりでした。出掛ける前に河村から軍手を渡され、「?」という感じだった私は「どうして軍手なんかいるの?」と聞くと、「少し岩場も歩くかもしれないからさ。そういうときに軍手があった方がいいんだよ。」と言われ、「ふ〜ん」とよく納得せずにはめていたのですが。その宝剣岳(「剣」なんて名前からして恐ろしそう。)は、切り立った岩場や岩場にぶら下がる鎖を頼りに登る鎖場の続き、一歩足を踏み外すと奈落の底に落ちていってしまう難所です。
 まさかそんな場所へ連れて行かれると思っていなかった私は、「何で、私がこんな目に遭わなきゃいけないワケ?」と河村を呪いながら登っていきました。ちょうど「リポビタンD 」のCMを思い出していただけると、その世界がお分りいただけると思います。途中、10メートルはある絶壁の鎖場に遭遇したときには思わず「私の体力ではここは無理だよ!」と叫んでしまいました。岩の壁に鎖がぶら下がっているだけの絶壁で、後ろは谷底です。「大丈夫だから。登ってみれば大したことないって。」という岩の上から叫ぶ河村の言葉も空しく聞こえます。でも、同じように鎖場の続くルートを引き返すわけにも行かず、自分自身に「後ろを振り向いたら駄目だ。」と強く言い聞かせ、勇気と体力を振り絞って登り切りましたが、あんな思いをしたのは、生きてきて初めてでした。
 



私の新調したばかりの赤いコールマンのステッキは、この岩場でもって哀れ傷だらけに。ですが、私の「第三の足」として、とっても役に立ってくれました。

 後でガイドを見てみると、そのルートは「鎖場多し、危険」「遭難多し」の文字が。また、「夏でも遭難が多いので初心者は入らないように」ですって。無事に生還できたから良かったものの、背中が凍り付くような気分でした。実は、河村自らも、すごく怖かったらしいのです。思わず心の中で「お母さん、怖いよ〜。」と叫んでしまったとか。あまりの無謀さに「もう、ほんとにアホなんだから。ちゃんと確かめから行きなさいよ!」と私がプンプンしたのも無理はないと思います。次回、来年の春こそは、お花畑のあるハイキングに近い山登りをしたいと思います。

 無事下山した私達は、そのまま昼神温泉へ直行。ツルツルの気持ちの良いお湯で、すっかり疲れを癒して帰ってきたのでした。名古屋から1時間半と近場のこの温泉、今度富野さんを誘ってみよう!


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