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2021年07月05日(月) 「知りたい」と「知りたくない」のはざまで。

出勤して、時計やら計算機やらハンコやらを入れたポーチをとろうと個人ボックスを開けたら、プリントが一枚入っていた。
「健康診断のご案内」という文字を見て、始業前から気が重くなる私。またこの季節がやってきたのね……。
すると、同じようにプリントに気づいた同僚が隣で声を上げた。
「そういえば、前回の健康診断の結果、まだ見てなかった気がする」
そして、本当に自分のボックスの奥底から「秋の健康診断の結果のお知らせ」と書かれた封筒を引っぱり出してきた。
えー、半年以上忘れていたの?それじゃあ健康診断を受けた意味がないじゃない。
……と思うのだが、結果が気にならないのは「引っかかることはない」という自信があるからだろう。

その余裕に感嘆しつつ、いや、私も彼女の年の頃は不安なんかなかったよなーと思い直す。結果が届けばその場で開封するものの、総合判定が「A」であることを確認しておしまい、という感じだった。
結果報告書を丹念に見るようになったのは、三十代半ばから。検査データの中にHighやLowのマークがちらほら出てきたのだ。職場の健康診断では「異常なし」でも、人間ドックのような手厚いものを受けたら「要経過観察」、ときには「要再検査」と書かれることも。
それからは、結果報告書が届くまでなんとなく落ちつかなくなった。開封するときもちょっぴり緊張する。
子どもを生んでからは「病気になるわけにはいかない」と強く思うようになったこともあり、すべての項目に目を通す。基準値外のものがあったら前回の値と比べ、気になる所見があったら勇気を出して受診する。

四十代、五十代の同僚も似たようなことを言う。
「健康診断の時期になるとつい、受けずに済む理由を探してしまう」
「受けるのはいいんだけど、結果待ちのあいだが嫌すぎる」
「結果を見るとき、動悸がする」
月六回の夜勤をこなす体力自慢の集団でも、この件に関しては気弱になる人が少なくない。「γ-GTPを下げるため、ひと月前から断酒する」というのまでいて、さすがに「そんな偽装工作したら、健康診断にならんやん!」とみなにつっこまれていたけれど。
「厚手の封筒が届いたときは、恐怖のあまり焼いてしまおうかと思った」
知りたい、知らなきゃいけない。でも怖い、知りたくない。職業柄、早期発見・早期治療の大切さを十二分に理解していても、自分のこととなると意気地がなくなるのだ。
健康診断の結果報告書はまさに身体の成績表。私は血圧やBMI、コレステロールや尿酸の値についてはノーマークだけれど、HbA1cは気になる。

健康診断のために休日をつぶすのは嫌だから夜勤明けに予約を入れる、と冒頭の同僚。そんなことをしたら尿検査で引っかかるかも、なんて心配はまるでしていないようだ。
そうよね、二十代、少々無理をしたって不摂生を続けたってコップの水はまだ溢れない。
あー、休みに出てくるの、面倒だナ。

【あとがき】
私の場合、仕事由来の不摂生が多いのですが(交替勤務のために生活が不規則とか、帰りが遅くて夕食は二十一時を回るとか、睡眠時間が短いとか)、いつまでも「仕事だからしかたがない」で済ませていてはだめですね……。