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2007年12月21日(金) 彼女のバッグを持つ男性

「発言小町」の掲示板に、めずらしく男性がトピックを立てていた。
「街で男性が恋人のハンドバッグを持ってあげているのを見かけますが、あれはどういう気持ちでしているのでしょうか。自分は荷物なら持ってあげたいですが、彼女がハンドバッグしか持っていないのにそれを持ってあげようとは思いません。女性はやっぱり持ってもらいたいものなのですか」
という質問だ。
投票結果は「ハンドバッグは自分で持つ」派が78%、「持ってほしい」派が22%。私はというと、「男性にそれを期待する女性がこんなにいるのか!」と驚いたくらいだから前者である。

トピには「自分のバッグは自分で持つ」女性たちからの、
「下僕みたいで滑稽。どれだけ尻に敷かれてるんだよ!と突っ込みたくなる」
「“彼女に尽くすオレ”と“彼に尽くされるワタシ”の自己陶酔型カップル」
「男性雑誌に“こうすればモテる”なんて書いてあるんでしょうか」
といったレスが連なっている。発言小町らしい辛口のコメントだが、私はそこまでシニカルな感想は持たない。
梅田や難波で男性が見るからにオンナものの小ぶりのバッグを持ち、一緒にいる女性が手ぶら……というカップルを見かけることがあるが、彼らになんの迷惑をかけられるわけでないからとくに快も不快もない。
とはいうものの、女性に似合うようデザインされたバッグを男性が持って絵になるはずがなく、彼があまり格好よく見えないのはたしかである。

にもかかわらず、それを持ちたがる男性がいるのはどういうわけなのか。
「『俺の彼女だ』と周囲にアピールしたいのだろう」と分析するレスがいくつかあったが、私はもっと単純な理由のような気がする。彼は恋人のことが可愛くてしかたがないのではないかなあ。
そういう男性は知り合いにもいる。何年か前に夫の同僚夫婦と香港に行ったとき、私は本当に驚いた。その同僚が奥さんのことをたえず気にかけ、なにからなにまで世話を焼くのである。
お世辞にもきれいとは言えない粥麺店の前で「でもこういう店がおいしいんだよね〜」と私が言うと、すかさず「ここでええか?食べられるものありそうか?」と妻に確認する。車道を横断するときは必ず手を引き、バスや船に乗れば景色がよく見える窓際の席に座らせる。ホテルや店ではドアを開けて妻を先に通らせ、缶ジュースはプルトップを開けて渡してやる。
なにがそんなに心配なのかわからないが、この人はとにかく彼女のことをほうっておけないのだなあと思いながら眺めたっけ。
それは自分の役目だ、と思っているかのように当たり前に恋人のバッグを持つ男性もそういうタイプなのではないかしらん。

* * * * *

私はいくつになっても恋人や夫にとって「女性」でありたいと願っているが、「子ども」のように扱われたいとは思わない。
だから自分のことは自分でする。自分のものは自分で持つ。メニューの心配をしてもらわなくても適当に注文するし、手を引いてもらわなくても道路くらい渡れる。彼女のバッグを持って歩いている男性を見ても「まあ、男らしい!」とか「やさしい人ね」という評価にはならず、「過保護だなあ」である。
それに、女性側にもそれを自分で持たないことによる不都合はないんだろうか。
私はいつも服に合わせてアクセサリーやバッグを選ぶので、バッグを男性に持たれるとせっかくのコーディネートがちょっと残念なことになってしまう。ものを買ったりお手洗いに行ったりするたび、いちいち返してもらわなくてはならないのもいかにも面倒そうだ。

……なんていうふうに考える私は、過去にお付き合いをした人から「バッグを持ってあげる」と言われたことがない。
持ってもらえるとうれしいと思う女性にはそれを持ちたがる男性がセットになり、そのくらい自分で持つわよという女性にはそれを当たり前と考える男性がつく。世の中、うまい具合にできているものだ。

【あとがき】
こんな私なので、付き合った男性から過保護的扱いを受けたことはあまりない(と思う)のだけれど、ひとり、デートのたびに必ず家まで送ってくれる人がいました。どんなに遠い場所にいても、遅い時間でも、付き合っていた間ずっとそうでした。タクシーなんだからひとりで大丈夫と何度言っても、心配だから、と。そして私が降りた後、そのタクシーで自分の家に帰っていくのですが、「ありがとう」以外にお金も時間ももったいないなあという気持ちはいつもありましたね。