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2006年10月16日(月) 女子高生のスカート丈についての一考察

電車の中で、背後から女の子のにぎやかな会話が聞こえてきた。
「さっきから思ててんけど、あんたのスカート、なんでそんな長いん」
「せやねん、ダサダサやろ。おかんがクリーニングとってくるん忘れとって、これしかなかってん」
「なんかむっちゃ変やで〜。ぎゃはは」
吊り革を持つ手を換えるふりをしてさりげなく振り返ると、制服姿の女子高生がふたり。どれほど長いのを履いているのかと視線を落として……「ええええ?」。
笑われていた女の子のスカート丈は膝上五センチというところ。隣りの女の子と比べればたしかに長いが、私の目には「制服やったら十分短いやん!」とつっこみを入れたくなる丈である。

自分が高校生だったときのことを思い出す。
当時、スカートは長いのがカッコイイとされていた。三年の途中から膝丈(膝上ではない)のスカートを履く女の子が出現したが、まだ走りで、校内で数人見かける程度。「短いほうがかわいい」という新しい価値観は私が卒業してから急速に広がったようだ。
そんなわけで、私の高校時代は足首と膝の中間くらいが一般的なスカート丈。私は憧れていた先輩を真似てもう少し長い「くるぶし上十センチ」にしていたのだが、中学のときのように服装検査があるわけでもないので問題なかった。私の記憶ではオシャレな女の子ほど長くしていたものだ。
そして、それよりさらに長いのを履いていたのがちょっと怖い人たちである。
学校帰りに公園などで近所の高校生がタバコを吸っているのをときどき見かけたが、彼女たちのスカートはつま先しか見えないような超ロング。私の学校にはいない種類の人たちだったので、「おお、これが不良少女というやつか」と妙に感心してしまった。

それから時は流れ、女子高生と言えばミニスカートという時代になった。が、私は街で彼女たちを見かけるたび、「ああ、私は八十年代の高校生で本当によかった」と胸をなでおろすのである。
あの頃、私は部活で鍛えたそりゃあ立派なふくらはぎをしていた。膝下丈のスカートを履いていたらダサいとかオシャレに無頓着とみなされる現代の高校生だったら、制服を着るのはさぞかし苦痛だったのではないだろうか……。
いや、しかし。あの頃の女の子は私に限らず、みな頑丈そうな足をしていたように思う。
ちょうどその頃放送されていたドラマ「スケバン刑事」をYouTubeで確認してみたところ、斉藤由貴さんも南野陽子さんも浅香唯さんもスカートの裾からのぞく足は、はっきり言ってものすごく太い。いまのアイドルではありえない足首をしている。
当時人気絶頂のアイドルだった彼女たちでさえこうなのである、私の足がたくましかったのも当然ではないか!

この二十年のあいだに女の子の足は本当に変わった。
太腿あらわに街を闊歩する女子高生は一様に棒のような足をしている。むかしだって足の細い子はもちろんいたが、上から下まで同じ太さのこんな足は記憶にない。
そして私は「なるほど、こういう足だからこの丈のスカートが似合うのね」とつぶやきながら、ラマルクの進化論を思い浮かべるのである。
「もともとキリンの首は短かったが、高いところにある木の葉を食べようと背伸びをしているうちに徐々に首が長くなっていき、いまの長さになった」
長いスカートを履いていたらダサい子だと思われる、モテない(=高い木の葉を食べられない)。高校にあがったらあのスカートが待っていると思えば、痩せないでいるわけにはいくまい。そこでいまの女の子たちは中学に入った頃からダイエットをしたり引き締め体操をしたりして、それを履ける足を作り上げていくのではないだろうか。
日本人はまぶたの脂肪が厚いためもともとは一重まぶたの人が多かったのだが、戦後二重まぶたが急に増えた。「ぱっちりした大きな目」が美の基準になり、若い女性はこぞってアイプチ(知らない人はとうのたったお姉さんに訊きましょう)などでそれを手に入れた。そしてその子どもも年頃になるとやはり二重に憧れ、“努力”する。そうしているうちに「二重」という形質が日本人に定着したのだ------という話を聞いたことがあるが、これもまた「こうなりたいと望む方向に進化する」の例かもしれない。
そう考えると、丈の短いのが流行りはじめた頃から女子高生の足がどんどん細くなっていったのも納得である。彼女たちは「大根足」という言葉を知っているのだろうか。

このたび二十年ぶりに「スケバン刑事」が復活、四代目麻宮サキを松浦亜弥さんがやるそうだが、スカート丈は膝上二十センチ、すらりとした見事な足だ。むかしのスケバンは人より長いスカートを履いたが、現代のスケバンは人より短いものを履くらしい。
ところで、「スケバン」なんてとうに絶滅したと思っていたけど、まだいたんだなあ。