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2006年06月26日(月) 近所からの苦情

同僚から聞いた話である。
彼女の知人の自宅のポストに宛名も差出人もない一通の封筒が入っていた。なんだろう?と読んでびっくり。お宅の犬の鳴き声がうるさいのでなんとかしてほしい、という内容だったのだ。
「へええ。で、その知り合いはどうしたん?」
「キレてた」
「……え、なんで?」
知人の言い分はこうらしい。ペット可のマンションに住むからには隣人が飼っている犬猫の鳴き声が多少聞こえることも了解しておくべきであろう、そういうことに寛容になれないのならペットを飼えるマンションになど住まねばよいのだ。それに匿名なんて卑怯じゃないか、言いたいことがあるならきちんと名乗るべきである、と。

苦情の手紙が届くなんてよほどのことだと思うのだが、それでも自分の非に目を向けようとしないのか!と私はかなり驚いた。
が、すぐに思い直した。ここまで自己中心的な人はめずらしいとしても、自分の犬が他人に与えている不快にものすごく鈍感な飼い主は決して少なくなさそうだ。

* * * * *

私の実家は新興住宅地の一角にある。ここ四、五年でよそから移ってきた人ばかりが住んでいる閑静な町だ。
その家を私はとても気に入っているのだけれど、ひとつだけ残念に思っていることがある。お向かいが飼っている柴犬とその隣家のコーギーが信じられないほどうるさいのだ。
毎朝六時きっかりに柴犬がワンワンワンワンと吠えはじめる。おそらく家人がその時間に起きるのだろう。すると隣のコーギーも目を覚まし、負けじとワンワンワンワン。昼間も庭に面した道を人や車が通るたび二匹が競い合うように吠えたてるため、鳴き声は一日中途絶えることがない。
私などはときどき帰省するだけだからまだいいが、ここで暮らしている人たちはさぞかしストレスを感じていることだろう。犬好きの私でも勘弁してよと思うくらいだから、犬を可愛いと思わない人や自宅で仕事をしている人、受験生や寝たきりの老人などはたまらないんじゃないだろうか。
不思議でしかたがないのだが、飼い主はあれをうるさく感じないのだろうか。うちよりもさらに大音量で聞こえているであろうに、叱りつける声は聞いたことがない。
それとも、愛犬の鳴き声は「騒音」にはならないのか……。

どうやらそのようである。
愛犬家が集うとある掲示板に、「引越ししたばかりの家の庭で犬たちを遊ばせていたら、見知らぬおじいさんに『犬がうるさい。こんな静かな住宅街で犬の商売をするな』と文句を言われた」という女性の投稿があったのだが、彼女の言い分とそれについたコメントのいくつかを読んだらそのことがよくわかる。

その方が一体なにを言いたかったのかわかりません。うるさいから黙らせろと言いたかったのか、うるさいから犬を捨てろと言いたかったのか。たしかにこの辺は静かなところですが、子どももギャーギャー言ってます。


面と向かってうるさい!と怒鳴られても「なにを言いたかったのかわからない」のか……。「子どもだって騒いでるじゃないの」か……。
唖然となるが、これに対するレスもすごい。

ご近所にたいていひとりくらいはうるさいお年寄りがいるものです。なにか言ってきたら「すみません、気をつけます」を繰り返し、ワンコはそのままで。そのうちなにも言ってこなくなりますよ〜。

ほんとに迷惑しているわけでもないのかも。なににでも文句を言いたい人っているじゃないですか。近隣への迷惑といっても吠え声のマックスが何ホーンかというのが決められていると思います。それ以下でしたら問題ありません。市役所等で測定器を貸してくれたはずです。違反していないのにまた文句を言ってくるようでしたら、恐喝ですので警察へ。


ふつうの住宅街でブリーダーをしていると勘違いされるほどたくさんの犬(十四匹)を飼っており、しかも、
「うちの子たちは人・動物を見つけたらもうワンワンが始まります。新聞屋さんが来てもお隣さんが見えてもワンワンです」
であるにもかかわらず、「苦情がきたのにびっくりした」「ちょっとした吠えにうるさい、うるさいと言われるとどうしたらいいのか……」と嘆く。どうやら投稿者と一部の飼い主たちはその苦情を理不尽なものと感じているらしい。

犬たちにとっては無駄吠えではなく、自分たちのテリトリーを守るために吠えてるんだと思うんです。

近所にあいさつ回りをしたとき、ゴミをチェックするおばさんがいるから気をつけてと言われたんですが、犬についてはこういう人がいるからとは言われなかったので、この辺は犬好きさんが多いのかなと思ってました。

そのおじいさん以外には、そんなにうるさいとは思われていないような気がします。


こういう人だから苦情になるのよねえ……と納得。
たとえテリトリーを守るための吠えであっても、住宅が密集した地域で飼われている犬にそれを許してやれないのは当たり前じゃないか。しかも十四匹、なのだ。神経質なほど気を遣わなくちゃ、そりゃあ鳴き声がどうの匂いがどうの抜け毛がどうのと言われてしまうさ。庭に毒を投げ込まれる心配をする前に、自分の犬が近隣に迷惑をかけていることを自覚しなさいよ。


「せっかくこの子たちのために庭付きの家を買ったのにやりきれない」と投稿者は言うけれど、嘆きたいのは近所の人たちのほう。夢のマイホームを手に入れたと思ったら、朝から晩まで鳴きわめく犬が引越ししてくるなんて。
庭に出して遊ばせてやるのは無駄吠えをしないという最低限のしつけをしてから。あなたにとっては可愛い可愛い子どもでも、他人には「ただの犬」だ。