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2005年12月26日(月) チャイムが鳴るとあたふたする理由

二十三日のクリスマスイブイブの日、独身の友人が泊まりがけで遊びにきた。「ひとりで過ごすのはいやっ!」と泣きつかれ、わが家で鍋パーティーをすることになったのだ。

さて当日、もうすぐ家を出るところという彼女から携帯にメールが入った。
「悪いけどスウェット貸してね。持って行くの重いので」
とある。スウェット?ああ、寝るときに着るのね。そうよね、いくら友人の夫とはいえ、恋人でもない男性にパジャマ姿は見せられないものね。
しかし、あいにく私はそれを持っていない。すると、「じゃあジャージでいいわ」と彼女。
えっ、ジャージって……テツandトモ(古いか)のあれ!?
いぶかしく思いつつ「なおさら持ってません」と送ると、返ってきたメールには「じゃあ持って行きます」に続いてこうあった。
「家でいったいなに着てるの?」

* * * * *

一時間ほどしてやってきた彼女とお茶を飲みながら、先程の会話の続きをする。
「なにを着てるのかって、それはこっちのセリフやわ。スウェットはともかく、家にジャージなんかあるわけないでしょ」
「なんで?私、家ではジャージかスウェットやけど」
「えっ、なんでジャージなんか着るん」
「なんでってふつうに着るやん、部屋着として」
「着いへんわ!あんたは体育教師かっ」

友人はひとり暮らしだから家の中で着るものにこだわる必要がないのはわかるのだが、だからってなにゆえジャージなんだ。そんなにハードに家事をするわけでなし、そこまで動きやすさや吸汗性を追求しなくても……え、べつにそれを求めてのジャージではない?
ではなんでまた。だってスウェットよりさらにかっこ悪いじゃないか。

……とここでふと思い出したのは、数日前に読売新聞監修の「発言小町」の中に見つけた、「スウェットでどこまで外出できますか?」というトピック。投稿主はスーパー勤務の女性で、
「上下スウェットで買い物に来ている女性客をよく見かけますが、恥ずかしくないのでしょうか。私は深夜の自販機、マクドナルドのドライブスルーまでなら行けるけど、それ以上は無理です」
という内容だったのであるが、ついたコメントの大半が「スウェットは家の中だけ」というもの(こちら)。たとえ家の目の前のゴミステーションでもマンション一階の自販機でも、玄関から一歩でも出るときは必ず着替える、宅配便が届いたり回覧版が回ってきたりしたら大慌てでジーンズに履き替える、という人が多かった。
「他人に見せられない」度合いはほとんどパジャマと同等のようである。
しかしながら、コンビニやスポーツジムくらいなら平気だという人も少数派ながらいたので、私は念のため友人に尋ねてみた。

「郵便物を取りに行ったりゴミを捨てに行ったりするときにいちいち着替えるのって面倒じゃない?」
「着替えへんもん」
「じゃあその格好で近所に買い物行ったりもするん?」
「スーパーには行かんけど、夜中にコンビニとかレンタルビデオ返しにとかは行くよ」

ひゃあ、スウェットで外出できる人がこんな身近にもいた!
が、私は動揺しつつももうひとつ確認する。

「ちなみにそのスウェットってどんなの?」

スウェットはスウェットでも、海外のセレブが普段着として愛用しているというジューシークチュールのスウェット(上下セットで五万円也)なんかもある。
友人が着ているのが、丸首で足元がすぼまった“グレースウェット”とは限らない。もしかしたら浜崎あゆみさんや神田うのさんが着ている、ウエストを絞り込んだ丈の短いパーカーにローライズでブーツカットのパンツ……というおしゃれスウェットかもしれないではないか。
が、彼女はすまして答えた。
「どんなのって……ふつうのトレーナーとズボンやけど?」


えらそうなことを言えるような立派なものを着ているわけではないけれど、私はスウェット(おしゃれスウェットでないやつね)を部屋着にするのにはかなり抵抗がある。
楽ちんなのは私も大歓迎だが、チャイムが鳴ったら猛ダッシュで着替えなくてはならないような格好というのは、さすがにかまわなさすぎなのではないだろうか。そして、もし近所でスウェットを着て歩いている隣人に出会ったら、彼女がその姿を他人に見られてもかまわないと思っているという点に私はさらに驚く。
上下スウェットでスーパーに行くか、スッピンで電車に乗るか。どちらかをやらねば火であぶると言われたら、私はどちらを選ぶだろう。

……という私も実は、夏場はチャイムの音にあたふたするのだけれど。
わが家にはクーラーというものがないため、これ以上は無理!というところまで薄着にならざるをえない。
よって、私はキャミ一枚(もちろん下着のキャミソールではない)。で、私は家ではブラをしない人。
なので、「ハーイ」とインターフォンに出てから大慌てで上を羽織る、間に合わないときはエプロンをひっかけて玄関に走ることになる。
毎夏のことながら、これ、けっこうなスリルです。