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2004年09月01日(水) 女の手の内、男の手の内

日記をアップしたあと、「あ、しまった」と思うことがある。愛だの恋だのについて書くとき、私は女の舞台裏を見せるようなことをわりとよく書くのだけれど(おっと、「小町さんは変わってる」と言われることが少なくないから、女の、といったらクレームがつくかしら)、あちゃーとつぶやくのは、読み手の男性に余計な知恵をつけてしまったとわかったときだ。
たとえば以前、「多くの男性は夏に女性が薄着になるのを歓迎するが、その視線はTシャツの胸やミニスカートの足にしか行くことはないのだろうか。腕のムダ毛や背中のニキビ、かかとの角質にげんなりすることはないのか」と書いたところ、こんなメールをいただいた。
「小町さんの日記を読んでからあらためて見ると、女性の肩から背中にかけての肌はきれいとばかりは言えませんね。おできができていたりもしますから」
「この日記を読んで、ミュールの女性のかかとの角質が見えるようになってしまいました」
三十過ぎであろうが既婚であろうが、私だって女の端くれ。世の男性の女性を見る目をシビアにして、損をすることはあっても得をすることはない。男性からのメールを読みながら「いらんこと言っちゃった」と机に突っ伏すのはこんなときだ。

とはいえ、こちらが「さらす」一方というわけでもない。ときにはそうした日記を読んだ男性が知られざる世界、すなわち“男の手の内”を教えてくれることもあるのだ。
前回の日記で、知性と品がウリの当サイトらしからぬ文章を書いたところ(キャー、誰よいま岩投げたの!)、ある男性日記書きさんから届いたのは、
「客観的に『必要ない』と思われる立場でもなぜか持ってたり(携帯)するのは、『男であること』を意識していたいからですかねぇ(笑)」
というコメント。衝撃のあまり、イスから転げ落ちそうになった私。日記を読んだことのある人なら、誰もが口を揃えて「子煩悩」「愛妻家」と言いそうな方である。意外な一面を見たなあと思いながら、「ぜったい奥さんに見つかっちゃだめですよ」とキーボードを叩く。
女性がこれに「うん、ほんとにチャンスあらば……って思ってるわけじゃなくて、男としてなんとなく持っていたいってことなんだよね」と余裕のリアクションを示すことができるのは、発言の主が自分の夫ではない場合に限られるのだ。
ちなみに、この方がお住まいのイギリスにはその手のホテルがないらしい。で、パブやクラブのトイレにはそれの自動販売機が設置してあるのだそうだ。へ、へええ。
そして、もうひとつ興味深く拝見したのが、「女性が『待ってました』というふうに思われぬよう心を砕くのと同じに、男性もまた初めて彼女の部屋を訪ねるとき、『しに来ました』とは思われたくないと考えるものなのだろうか」に対する、このコメント。
「初めての場合はさすがに『するために来ました』ってのはおもてに出さないようにするんじゃないでしょうか。じゃあ、準備してあるのは何でだと言えば、『もしも君とそうなったときに後悔したくないから』とか何とか、その辺が公式見解ってことになるのかと」
そうか、ではあのとき私が「ところであなた、どうしてそんなもの持ってるの?」と尋ねていたら、こういう答えが返ってきていたのだろうか。そんなイジワルはしたことはないが、想像するとふきだしそうになる。
シーツを洗濯したりパジャマを新調したりしているくせに、「そんなこと全然考えてないワ」という顔をしたがる女性もけなげ。だけれど、この期に及んでこんな“言い訳”を用意している男性も可愛いではないか。
手の内はお見通しでも、互いに何食わぬ顔をして相手の“フリ”に引っかかってあげる。なんて麗しいんだろう。
ああ、私にもそんな頃があったんだよなあ。

※参照過去ログ 2004年8月30日付 「身も蓋もない話

【あとがき】
財布の中に入れていつも持ち歩いているという人は、男女問わずけっこういるみたいですね。私の友人(女性)にもひとりいるのですが、いただいたメッセージの中にも「独身時代は携帯してました」というものがいくつかありました。でもどうなんでしょう、先日のハンカチの話じゃないけれど、持っていなくてもべつに不便はないのではないのかしらん。だって、予期せぬ相手とそういうことをすることになったときはたいていホテルに行くんじゃないの?だったら置いてあるんだし。
……と、上記のコメント(「もしもそうなったときに後悔したくないから」のほうの)をくださった方に言ったら。「部屋に備えつけてあるとは限らない。僕は以前、1個につき100円取られたことがある」とのこと。な、なるほど……。