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2004年07月05日(月) 欲求不満なのはどちらか

数日前の新聞でサラリーマンの帰宅時間について書かれたコラムを読んだ。
それには「割合がもっとも高いのは十九・二十時台」とあり、私はずいぶん驚いた。その時間に家に着くということはほとんど残業をしていない、あるいは定時のチャイムが鳴って二時間以内には会社を出ていることになる。
過去にお付き合いした男性の中に、その時間帯のテレビを見ることができた人はひとりもいなかった。彼らがいまも同じ会社に勤めているなら、もしパパになっていたとしても小さな息子や娘が起きているあいだに帰宅できる日は年に数えるくらいしかないだろう。
そうか、世の男性ってけっこう早々と店仕舞いしてるんだなあ。
とはいうものの。みながみな、「家に早く帰りたい」と思っているわけでもないらしい。そのコラムにはこんなつづきがあった。

テレビ局の幹部から聞いたことがある。ある日、いつになく早く帰宅すると女房の様子がいつもと違う。妙に艶めかしい。子供達は旅行中。これはヤバイと思い、眠気をこらえて、新聞をくまなく読んでも時計はなかなか進まない。ついに諦め、ベッドへ。いびきをかいて寝たふりをしていると、隣からは溜め息が……。朝まで一睡もできなかったそうである。次の日、帰宅が大幅に遅れたのは言うまでもない。
くれぐれも、帰宅時間には気をつけなきゃと思った次第である。


実は以前から疑問に思っていたのだ。とかく男性は「女房相手じゃそんな気になれないよ」というふうに語りたがるけれど、これはただのポーズなのか。それとも、まじめに言っているのか。
これを聞くたび、私は心の中で「奥さんが溜め息?そんなわけないじゃない」と突っ込まずにいられないのである。
自分はすでに妻を女として見られなくなっているのに、自分のほうはいまも妻の目に男に映っている、などとどうして信じることができるのだろう。私はそれが不思議でならない。ずいぶん能天気じゃあないか。
一方がパートナーとのセックスに飽きているとしたら、もう一方も同じだけ飽きている。夫が「女房と?カンベンしてよ」であるなら、妻の口からも同じセリフが出てくる。そう考えるのが自然ではないだろうか。嫌っている相手から好感を持たれることがないように、これだってお互い様であろう。
いや、それどころか、私はこの件に関してより“不憫”なのは夫のほうではないのか?とさえ思っている。女性は子どもが生まれると夫どころではなくなるという話を聞く。そちらに手を取られるからというだけでなく、出産後に分泌される母性ホルモンの影響で実際に性欲が減退するからである。
妻が出産のために里帰りしたまま三ヶ月たっても戻ってこない、と愚痴をこぼす友人がいる。「帰ってきたらその日にするからな」と言い渡してある、と彼が言うのを聞いて、私はうっかり口を滑らせた。
「あ、わかった。奥さん、それが嫌で帰ってこないんだよ」
浮気をしたり風俗店に通ったりしている夫がマジョリティであるとは思えない。男性の性欲が女性のそれの三十倍だというならば、「してくれない」と妻がふてくされるより、「させてくれない」と夫がスネる図のほうが理にかなっており、現実的である。
……と私は考えているのだけれど、どうだろうか。
なんて皮肉のひとつも言いたくなるのは、私が「欲求不満」の四文字が枕詞のようについてくる“人妻”の立場にいるからかしら。

【あとがき】
以前、派遣社員としてしばらくお世話になった会社は残業というものが存在しないところでした。定時十分前になると女性は制服を着替えに、男性はロッカーに入れてあるカバンを取りに行くのですね。終業直前に持ち込まれた仕事はもちろん明日。「もう時間だから」これが通用するのです。で、チャイムが鳴ったら室長からパートの女性まで一斉に席を立つ。こんな会社もあるのだなあと思いました。