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2004年03月26日(金) 気になる男性からは言われたくないこと

林真理子さんのエッセイにこんな話があった。
あるとき雑誌に載ることになったのだが、そのページに知人が彼女についてコメントするスペースがある。友人から林さんへのオマージュというやつだ。彼女はそれをふだんからいいなと思っている、友人一ハンサムでインテリな男性に依頼した。
彼の目に自分がどんなふうに映っているかがわかる、と彼女はとても楽しみにしていた。はたして出来あがってきた文章はユーモアとエスプリがきいたすてきなものであった。
しかし実を言うと、一箇所だけ気になるところがあった。

「料理を食べるのも早い」
というくだりに私はちょっと傷ついた。少なくとも気になる男性から言われたくなかった。そうか、よく一緒に食事をしたが、私って本当に色気のない食べ方をしていたのねと深く反省した。


「わかるなあ、それ」
私は思わずつぶやいた。食べるという行為は驚くほど人を無防備にする。食べ姿には知らず知らずのうちにその人の品性が表れているものなのだ。
会社の昼休憩にさっと食べて席を立つ、ということなら話は別だが、それ以外のシーンでの女性の「食べるのが早い」はやはり色気のなさと結びついているような気がする。いかに都合よく解釈しようと試みても、褒め言葉として受け取るのはむずかしそうだ。私がこれを言われたら、赤面し、やはりちょっぴり落ち込むだろう。

女性やノーマークの男性から言われてもなんともないが、憎からず思っている男性からだと複雑な気分になる言葉というのは、私にもある。そのひとつが、「小町さんってお酒強そう」というものだ。
サークルや職場の飲み会に出ると、やたらビールを注ぎに来られたものだ。彼らがよからぬことを考えて私を酔わせようとした……なんてわけはもちろんなく、私がイケる口だと信じて疑わなかったらしい。「ごめんやけど、私、お酒弱いんよ」と手でコップに蓋をしても、「ハイハイ」と無邪気に払いのけられるのが常であった。
ある男性と初めてふたりで飲みに行ったとき、私は化粧直しにトイレに向かう途中で気分が悪くなってしまった。あ、やばいとその場にしゃがみ、持ち直すまでしばらくうずくまっていた。その後席に戻った私を見て、彼は「顔が真っ白だよ!」と声をあげた。少し具合が悪くなっちゃって……と答えると、「もしかしてさっきしゃがんでたの、それで?」と彼。
「そうだったの!てっきり靴の紐を直してるんだと思ってた」
あなたは靴紐を結ぶのにいったい何分かかるのよと言いたくなったが、彼もまた私がチューハイ一杯半で酔いが回る女だとは夢にも思っていなかったそうだ。
「飲めそう」がなぜうれしくないか。お酒に強そうな女性といって私が思い浮かべるのが、江角マキコさんや和田アキ子さんといった、私の目に「色気に欠ける」と映る女性たちだからである。男性に「姉御肌」「豪快」「男性的」というイメージを持たれるのは私の望むところではない。

そんな話を友人にしたところ、「言われたらショックな言葉、私にもあるわ」と彼女。
森高千里似の彼女は美人揃いの私の友人の中でもピカ一のルックスだ。そんな彼女が歓迎しない言葉とは、「○○さんって遊んでるんでしょ」というもの。
男性は「こんなにきれいなんだから男がいないわけがない。いつまでも結婚しないのは独身生活を謳歌したいからなんだろう」と考えるらしいのだが、彼女は「冗談じゃない、遊ぶどころか彼氏もおらんのに」と声を荒げる。
恋人はいないと言っても信じてもらえないなんてうらやましい気もするが、当の本人にはきわめて深刻な問題であるようだ。
彼女はこの春、彼氏いない歴十三年目に突入する。

【あとがき】
彼女は本当に美人なんですね。スタイルも抜群だし、性格もいい。それなのに、大学時代にひとり付き合ったことがあるだけで、以降はさっぱりなんだそうで。なにが敗因なのか私にはわかりません。やはり何事もホドホドがいいということでしょうか。きっとキレイ過ぎると男性は気後れしてしまうのでしょう(自分に自信のある男性は少ないしね)。