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2002年08月11日(日) 色気のある人

「ほんとに色気のない女だなあ……」
夕食の後片付けを終え、くつろいでいるときに耳に飛び込んできた夫のつぶやき。ソファに横になってテレビを見ていた私はドキリ。あわてて足元をチェック。
が、彼の視線の先にいたのは私ではなく、『ショムニFINAL』の江角マキコさんであった。
ふだん女性の品定め的なことをほとんど口にしない彼が感極まったようにつぶやいたところを見ると、よほどのものがあったのだろう。江角さんになのか、坪井千夏になのかは知らないけれど。
そのときは「どこらへんが?」とは尋ねるまでもないような気がしたのでスルーしたが、ここ数日「そういえば色気ってなんだろう」と考えている。

みなさんのまわりにも、「色気がある」と評される女性がいるだろう。色っぽい女性と聞いて思い浮かべるのは、バストが豊かだったり、美脚だったり、むちむちしていたり、口元にほくろがあったり、ハスキーボイスだったりといったところではないだろうか。
しかし、私はいま挙げたような肉体的要素に由来するなまめかしさ、あだっぽさをあえて「セックスアピール」という言葉で表現し、「色気」とは区別して考えたい。
たとえば叶姉妹。あの胸から腰にかけてのまるでひょうたんのようなくびれ具合はたしかに眼福ものだし、彼女たちの売りがそれであることも間違いないが、私としては「色気がある」とは言わない。外見的特徴に依存するのではなく、あくまで内面的、精神的な要素から発生するもの。仕草、表情、言葉、文章------そういったものにおのずとにじみ出るものが私の思う「色気」である。
セックスアピールの上に色気が乗っかれば、それはもう行く道敵なしのオラオラ状態であろうが、そんなのはまれだ。ふつうはまあ女の子が十五人くらいいたら、どちらかを持っているのがひとりいるかどうかというところではないだろうか。
そして、私は「セックスアピール持ち」と「色気持ち」を勝負させたら、後者に軍配があがると思っている。
なぜなら、色気持ちはたいてい自分の中のそれを自覚していて、効果的に出したり引っ込めたりする計算高さを持ち合わせているからだ。もちろん本人はそんなことはおくびにも出さないけれど。
「美人は三日見たら飽きる」と言われるが、それに比べ、外からは窺い知れない部分が実は……というのは、異性をやたらとかきたてるものがあるような気がする。

私の友人にもう十年近く、男日照りが続いているのがいる。
どうしようもなく不器量だとか性格がねじ曲がっているということであれば納得もいくし、あきらめもつくのだが、彼女はものすごい美人である。
なのに、いまや堂々たる蜘蛛の巣城の主だ。なぜか。
色気がない。このひと言に尽きる。人目を引く見た目をしているにもかかわらず、そそるものがない。私はその原因を、彼女の「気のつかなさ」「男心の機微を読む力の欠如」によると分析している。
たとえば、ある合コンの席で。彼女は男の子から電話番号を書いたコースターを渡されたというのに、それをいつまでもテーブルの上に置いたまま。相手は照れくさい思いをしているだろうから、そういうときはさりげなくバッグにしまうのが受け取った側のマナーではないかしら。たとえ彼に興味がなくても、相手に恥をかかせぬだけのリアクションはするべきだ。
「営業先でもらった名刺じゃあるまいし、さっさとしまってあげなさいよ」
私はハラハラしながら見ていたのだが、結局、彼女はそれを店に忘れてきてしまった。そこまでの仕打ちをしておきながら、「まんざらでもなかったのに」なんて言うのだから驚いてしまう。
そんな彼女に「爪の垢を煎じて飲ませてやりたい」と私が思い浮かべるのは、大学時代のクラスメートだ。入学してすぐの初顔合わせの場での自己紹介で、私は彼女のひとことに頭をガツンとやられた。
彼女は無邪気にこう言った。
「私の特技は『甘いかぼちゃを見分けること』です」
スイカでもなくメロンでもなく、かぼちゃ。
私は料理が好きなんですよ、得意なんですよ、家庭的でしょ------彼女がどこまで意図していたかは知らない。しかし、これほど含蓄に富み、背景を読ませる言葉があるだろうか。
これは天性のものだ、と私は心底感心した。そして私の読み通り、その後彼女はモテにモテた。
「えっと、特技はカラオケマラソンです!」
と元気いっぱいに答えた私の行く末は述べるまでもない。

【あとがき】
私が色っぽさ最強だと思う女性は、峰不二子ですね。「そりゃないぜぇ、ふ〜じこちゃ〜ん」とルパンはしょっちゅうトホホな目に遭わされているけれど、不二子から離れられない。彼女が単なる美人、スタイル抜群というのでなく、頭がよい女性だからでしょう。でないと色気は宿らないと思います。私は色気のある男性が好きです。