雲はどこへ行った...rhoda

 

 

「大切なのは、どこかを指して行くことなので、到着することではないのだ、というのも、死、以外に到着というものはあり得ないのだから」 - 2005年03月19日(土)

本についての本3冊。

『本の愉しみ、書棚の悩み』アン・ファディマン
 この題名はどうかと思うが、本好きにはとても楽しい軽い読み物。本自体についてというより、今までの人生の中での本にまつわるエピソード集になっている。物書き同士の結婚で、二人の蔵書をどうやって一つにしたかとか、折ったり線を引いたり書き込んだり破ったり食べたり、あるいは埃もつかさないように大事にするといった本の読み方の話しとか、実際に小説の舞台になっている場所で読書する話しとか、とにかくエピソードと文章の引用には事欠かないようだ。
 書き込みは思い出にもなるし、記録にもなるからもっとやってもいいな。といっても図書館で借りてきた本にはできないけれど。

『石ころだって役に立つ』関川夏央
 題名だけ読むと人生論かよって思うけど、副題を読めばよくわかる。「本」と「物語」に関する記憶の「物語」。(思わせぶり過ぎる。)文学ばかり読んでいたり、ミステリーばかり読んでいたり、高校生だったり、同棲しているときだったり、あてもない時期だったり、50前だったり。いつもながらとても感傷的。昔の日本映画を観ている感覚。でもただ感傷的なだけではなくて、自分の生きてきた場所や時代を対象化しているから、こっちも入っていける。
 BSで昭和20年の記録についてやっていて、空襲の後の焼け野原で、この仇は必ず討つ、という張り紙を映した映像があって、ぞっとした。それを書いた人はその後の日本の変わりようをどう見ていただろうか。都市のあらかた焼かれておいてなんであんなにすぐにアメリカを受け入れられたのか、未だに、というか最近よく疑問に思う。あまりにコテンパにやられたのと、目が覚めたのと、お人好しな国民性のため、だろうか。憎しみはどこ行ったのか・・・。と同時に韓国や中国からはいつまで恨まれなければならないのかと思う。なんかそういうところがいつまでも自分の中で片がつかない。
 いや、戦争の話しではなくて、青春の本だよ、これは。
 「大切なのは・・・」はこの中にあった須賀敦子の好きだった言葉(サンテグジュペリ『城砦』の中の)。

『本棚の歴史』ヘンリー・ペトロスキー
 まだ30ページしか読んでないけど、もう返さなければならない。題名どおり本棚の歴史の話しだということは確かなようだ。しかしこの本すごく読みづらい。紙がとても黄色っぽい上に活字が薄くてしかも余白が少ないときてる。活字は活版印刷の触って凸凹した力強いのがいい。でなくとも、本についての本なのだから、もう少し気遣ってくれよ。


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