スイッチ

スイッチがある。

赤・青・黄色。光を発したり、形を変えてみたり。
カチッ、プニっといった押し心地があるスイッチもあれば、押し心地が無いスイッチもある。エレベーターでよく見る透明のスイッチは、押した感覚も無く、指定された階の番号を照らし出す。
スイッチに内蔵されたコンデンサが、蓄えた電荷を人体を通じて流すことでスイッチをオン側に切り替えるのだ。

カチッ。

スイッチがオンする。

押してはいけないスイッチもある。学校の廊下に設置された非常スイッチや重要施設に用意された緊急停止スイッチ。ミサイルの発射スイッチであったり。
そういうスイッチに限って、決まってケバケバしい色をして自己主張をしてくる。

そもそも、スイッチは押すために設計されているものだ。つまり、押すと気持ちいいスイッチがよいスイッチなのだ。

だから、世の中のたいていの人はスイッチを押すのが好きだ。無意識にリモコンのボタンをカチカチやったり、意味も無く携帯電話のボタンをいじってみたり、シャーペンの芯を押し出したり。

そして、スイッチが大好きなたいていの人は、普段押されることのないスイッチを見かけ、時間が経つにつれこう思うのに至るのである。

「あのスイッチを押したらどんな押し心地がするのだろうか?」

この堪え難い好奇心。心の奥底からわき上がる衝動と欲求。

しかして、小中学校では半年に一回ほど、定期点検でもない日に非常ベルがけたたましく鳴り響く事となる。

リスクと好奇心の天秤。


だれもいない真夜中のビル。
何の説明書きもない古びた緑色のスイッチを目の前にして、僕はそんな事を考えていた。
2005年10月10日(月)

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