穴 2

小学生のころ 学校帰りに捨てられていた子犬を拾って 家に連れて帰った

雑種で 薄汚れていたけど 子犬らしいかわいさと 
雑種らしいたくましさを持っていた
僕には楽しい未来しか見えなかった
犬のいる生活

僕にとって100%の幸福だった

家に連れ帰ると 親は子犬を捨ててこいと
眉間にしわを寄せて答えた

親にとって子犬は100%の不幸だった

僕は子犬を連れて 子犬が捨てられていた地下道へと 歩いていった
段ボール箱の中に 再び子犬をおさめ 
家から持ってきたバスタオルと
自分のお小遣いで買った 菓子パンを添えた

その行為が意味する事を 僕は知っていた
僕はその命を 裏切り
その命の火を 吹き消した

僕はその日から その地下道を使わなかった
僕の耳には 子犬の鳴き声が張り付いて 消えなかったから
子犬はまだ 僕の背中を見つめて 泣き続けている
2005年08月03日(水)

exlog / ex

My追加