もうちゃ箱主人の日記
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2010年09月02日(木) モーツァルトの「ハイブリッド・ミサ曲」!

たまには、モーツァルトのことも書かなければ、、、(笑)

来週土曜日、モーツァルティアン・フェライン例会で
お話することになりました。

そのネタの1つがこれ。


「ハイブリッド・ミサ曲」とは絶妙なネーミングですね!

ジュリー・シュネーペルという研究者が
1989/90のモーツァルト年鑑に発表した
"A special study" of Mozart's hybrid masses
という論文のタイトルの一部です。


>"A special study" of Mozart's hybrid masses / by Julie Schnepel .
- Mozart-Jahrbuch / herausgegeben von der Internationalen Stiftung
  Mozarteum . Jahrgang 1989/90, p. 55-72

訳してみるとすれば
「モーツァルトのハイブリッド・ミサ曲における『特別な研究』」
 といったものでしょうか。

  『特別な研究』とは、1776年9月のマルティーニ神父宛書簡にある
  「ザルツブルクでミサ曲を書くには、『特別な研究』が必要です」を
  引用したもの。




内容が、西川先生の著書にご紹介されてますので
そこから抜粋してみますと、、、


> (『モーツァルト』 西川尚生 音楽之友社 2005。 204−210頁 )

真正性が確定しているザルツブルク時代のミサ曲は十五曲あり、それらは近年のJ・シュネーペルの研究にしたがえば、以下の三つのタイプに分けられる。

第一のタイプは「ミサ・ソレムニス」であり、3曲の作品(KV 66, 139,
167)がここに含まれる。これは、重要度の高い祝日(Festa Paltii)に
大司教自らが執り行なうミサ(盛儀、ミサ)で演奏されたものであり、
楽曲の規模が大きく、楽器編成にトランペットとティンパ二が入っている点が特徴である。

第二のタイプはその対極にある「ミサ・ブレヴィス」であり、ここには、5曲(KV 49, 65, 192, 194,275)が含まれる。
これはよりり重要度の低い祝日(Festa Praepositi等)に大司教以外の主任
司祭などが執り行なうミサ(略儀ミサ)で演奏されたものであり、曲の作りが簡素で短く、管楽器なしの教会トリオ(ヴァイオリン二部と通奏低音)の編成をとるものが多い。

一方、第三のタイプは、「ミサ・ソレムニス」と「ミサ・ブレヴィス」の混合した「ミサ・ブレヴィス・ソレムニス」といわれるもので、
計7曲(KV 220、257、258、259、262、317、337)がこれに属する。

従来は、楽曲の長さやフーガの有無などによって、「ミサ・ソレムニス」と「ミサ・ブレヴィス」2つに分類するのが一般的だったが、W・ゼンは「ミサ・ブレヴィス・ソレムニス」という、この三つ目のタイプの存在に気付き、モーツァルトのミサ曲を初めて3つに分類した。
シュネーペルの分類は、ミサ曲の各章の様式的特徴(歌詞の扱いと楽曲の構成)をふまえて、ゼンのさらに精緻にしたものである。

この「ミサ・ブレヴイス・ソレムニス」は、楽器編成(トランペットとティンパ二を含む)の点では、ミサ・ソレムニスと共通し、簡素な楽曲構成という点では、「ミサ・ブレヴィス」に近い様式をそなえている。

シュネーペルは、モーツァルトがこれら三つのタイプを意識的に書き分けていたと考えており、とくに中間形態の「ミサ・ブレヴィス・ソレムニス」は、、大司教コロレドの教会改革との関連で作曲されたものだと推測している。
モーツァルトのマルティーニ師宛ての手紙(1776年9月付)には、ザルツブルクでは大司教自身が執り行なう盛儀ミサでさえ、45分の時間制限があり、ミサ曲は常にトランペットとティンパ二を伴なっていなければならない、と書かれているが、シユネーペルにしたがえば、こうしたコロレドの要求に応えて作曲されたのが、ほかならぬ「ミサ・ブレヴイス・ソレムニス」だということになる。《後略》


西川先生は、この説について
「たしかに、「ミサ・ブレヴイス・ソレムニス」は、楽器編成のうえで華やかな響きを残しながら、構成がシンプルで演奏時間も比較的短くてすむという点で、コロレドの要求に合致したものといえよう。」と
評価しておられます。


例会では、この説について批判的に検討してみたいと思います。





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