日常のかけら
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◇ゆず湯◇

「なあ、なんか今年は柚子の数、多くね?」

ぷかぷかと湯船に浮かぶ黄色い実を見回して悟空が首を傾げる。
言われてみれば、今年は湯船の三分の二を柚子が占めているような…

「うわ、穴まで開いてる」

浮かべてある柚子を持ち上げて、悟空がぎゅっとその実を握る。
すると、湯のぼたぼたと柚子の果汁がこぼれ落ち、柚子独特の香りがきつくなった。

「すっげえ…な、三蔵、もっと絞っていい?」

両手に柚子を持って訊いてくるのへ、

「柚子付けのサルになりたかったらかまわん」

言えば、一瞬呆けた顔をしたかと思うと、嫌そうに顔を顰めた。
一体何を想像したのか。
が、すぐに、

「なら、三蔵も柚子付けぼーずだな」

そう言って笑うから、思わず目の前の柚子を悟空に向かって投げた。

「喧しいっ」
「…ってなぁ…本当のことじゃん」

口を尖らせて柚子の当たった所を大げさに撫でながら悟空は湯船に鼻まで浸かた。

大量の柚子とその果汁とむせかえるほどの柚子の匂いのおかげで、翌日風呂に入るまで、俺と悟空から柚子の匂いがしていたらしい。

(三蔵)

2011年12月23日(金)