日常のかけら
◇今だけ…◇
するりと透明な蜜色の瞳を片手で覆う。 小さな顔は俺の手のひらでその殆どが覆われてしまって。 お前は小さく身体を揺らして。 いつも俺を見つけた時、ぱっと花が咲いたように顔を綻ばせ、俺が自分を見ていると気付けば、途端に戸惑い、少し怯えた表情になる。 だから、時折こうやって触れる。 そう、ただふわりと抱きしめるだけ。 たった、それだけでお前は追いつめられた小さな動物のように身体を強張らせてしまう。 それも最近、ほんの少し慣れたのか、身体の強張りがすぐに解けるようになった。 その細い項に、その小さな背中に、その薄い胸に秘めた想いはどんなものなのだろう。 その華奢な身体で背負ってきたものはもう、降ろせたのだろうか。 今だけ、この一時だけでも、お前の竦んだ心がほどけていればいいと願う。 今だけ……
(三 蔵/愛をください)
2005年08月19日(金)
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