大黒といえば、とある歌を思い出した。万葉集に見える、大伴家持が越中赴任時に歌った「思放逸鷹夢見感悦作歌」。
…露霜の 秋に至れば 野もさはに 鳥すだけりと 大夫(ますらを)の 伴誘ひて 鷹はしも 數多(あまた)あれども 矢形尾の 吾が大黒に(大黒は蒼鷹の名なり) 白塗の 鈴取り附けて 朝獵に 五百つ鳥立て 夕獵に 千鳥踏み立て 追う毎に 免(ゆる)すことなく 手放(たばな)れも をちもか易き これを除(お)きて 又はあり難し…
この歌は、1996年の「第1回国民文化祭とやま'96」で木下牧子さんによって混成合唱曲として作曲され、「合唱の祭典」で歌われた。自分も歌った。全三曲の組曲の最後に置かれた壮大な曲で、伴奏のピアノ奏者はたぶん死ぬほど疲れる。 この練習の時の話だけど、この曲は当初ゆっくりめのテンポで歌われており、さらにこの曲はけっこうな長さがあったため、歌っているほうもちょっと辛くてだるかった。作曲者が初めて練習に来たときにまずひと通り聴いてもらったがそのときもそんな感じだったので(朝、ということもあったが)、「あー、こりゃマズいなー」と思った。 作曲者はやはり「ちょっと元気ないですね・・・」ともらしたが、すぐに指揮者に「テンポが遅いので、もっと速くしてください」とテンポについての指示を出し、もう一度通してくださいと言った。 そしてもう一度通しとなったが、先ほどよりもはるかに高速で始まったピアノ前奏の劇的なこと!合唱もその勢いに乗ってそれまで元気がなかったのがウソのような燃える演奏を繰り広げ、一気呵成に歌い終わったときには、 「やべー、この曲実はカッコいいじゃん」 となっていた。その変わり様には作曲者もちょっと驚いていた。 …という昔のことをふと思い出した。どんな曲か知りたい人は、カワイ出版からこの組曲の楽譜が出ているから見てみたらいいじゃないかな。
テンポ次第で音楽は全く別の顔を見せる。音楽だけでなく、サッカーでもそう。テンポをビシッと定め、その中で緩急や強弱を的確につけ、陰影に富んだひとつの美しい作品を創り上げる…サンフレッチェにも、そういう芸術を見たい。 代表?代表は勝てばいいのだ。勝てば「ブラボー!」負ければ「カスども!」、この生き死にの世界こそが代表戦というもの。
U−20日本代表候補に選出された五人は今朝小野監督に呼ばれてそのことを知らされたが、そのとき、自分が選ばれたとは夢にも思っていなかったマナは、自分が何か悪いことをしてしまったので怒られるんじゃないかと戦々兢々で監督のところに行ったらしい。頑張ってきてくれ!
|