昨日(7日)、渋谷パルコ劇場にて「双頭の鷲」を観てきました。
ナマ美輪さまですよー。すっごく楽しみにしていたのですよー。
「SHOCK」とか劇団☆新感線とか、
動きもセットもド派手で飽きさせる間が全く無い、
ストーリーも荒唐無稽でミーハー心をくすぐる役者さん勢ぞろい、
の舞台に慣れてしまった自分が、こういう正統派の舞台をどう楽しめるのか、
その点が未知数だったのですが、いやいや全然大丈夫でした。
大丈夫でしたなんて言い方は失礼ですな。
とても面白かったです。
本編の悲劇的な結末には、感情移入するというよりとにかく圧倒されて、
涙なんかほろりともこぼれなかったのに、
カーテンコールになったらいきなり涙が止まらなくなってしまったですよ。
国王に先立たれた美しい王妃(美輪明宏)は、長年喪に服しつつ、
はやく国王の後を追って死にたい、ということばかり考えて日々を送っている。
ある嵐の夜、警察に追われ怪我をした若者(木村彰吾)が
王妃の部屋の窓に逃げ込んでくるのだが、その若者が亡き国王に生き写しだったため、
王妃はとっさにその若者をかくまってしまう。
実はその若者は反体制派で、城に侵入したのは王妃を暗殺するため。
早く死にたい王妃はその若者を歓迎し、「今から3日間の猶予を与えるから
その間に自分を殺してくれ」と、若者に命ずる。
最初は王妃への憎しみに燃えていた若者と、
ただ死ぬことばかり望んでいた王妃だったのが、
ふたりで語り合ううちに、さまざまな壁や誤解が解かれてきて、
互いへの愛と、これまでとは違う生きかたを見出す。
で、若者は王妃をかげながら支えようとし、
王妃は若者に勇気づけられて久しく遠ざかっていた国政に再びたずさわり、
国の再建に乗り出そうとする。
が、王妃の復権も若者の存在も快く思わない大きな権力のせいで・・・
という、お話としてはとてもわかりやすい悲恋もの。
死をもって至高の愛を貫く、というやつです。
でもこれが、動きや場面転換はほとんどなく、ひたすら膨大な量のセリフだけで
進んでいくのです。すごいっすよ、あの長ゼリフ。
だからこそ、その言葉を聞きたいという気にさせる雰囲気や存在感や声を
持つ役者がしゃべってくれないことには聞く気になれないし、
セリフだけで様々な情景がさっと頭の中に広がるような、
わかりやすい内容でなくてはならないし、
だけどわかりやすいだけじゃなくて、格調高く美しい言葉であることが
この王妃をめぐる物語では最大の説得力を生むことになる。
それらが見事に全部クリアされていたわけですよ。
だからね、セリフが長くても聞いてるのが全然苦じゃないの。
むしろ、すっごく集中して聞いてしまう。
王妃と若者の、様々な想いや心の高ぶりが、がしがし伝わってくるの。
しかも美輪さまは、なんと言うかまわりの空気を妖しく振動させるような声でしょ。
木村彰吾氏のお芝居は初めて観たのだけど、低音のとてもよく通る声だし。
それが、客席450くらいの小さい劇場だから全部生声で聞こえてくる。
動きは少ないのだけど、ふつふつとパワーがみなぎってくるような舞台でした。
ドレスも美しいし、王妃の居城の中のセットもゴールド基調でそれはそれは豪華だし。
っつーかね、下世話なこと言えば、美輪さまは70歳くらいになられるわけでしょ?
今観に行っておかなくては!と思って行ったというのもあるのですよ。
そのお方があの声量であのセリフの量(本編みっちり3時間+15分の休憩が2回)、
しかも最後に階段落ち(落ちるのは木村彰吾氏。座長のように回転したりはしない。)の場面もあるから、
裾の長いすっごい絢爛豪華なドレスのまま階段も頻繁に昇り降りなさってた。
どんだけのパワーをお持ちの方なのかと。美輪さまおそるべし。
相手役の木村彰吾氏という役者さんは、初めて拝見したのですが、
ひじょーに古風な印象の方ですな。この役のせいもあるのだろうけど。
どっちかというと石原軍団寄りの、長身で洗いっぱなしっぽい短髪に太まゆで
「自分、カッコのつけ方とかよくわかりません」みたいな身のこなし。
日頃じゃにじゃにした若者ばっかり見てるもので、こういう役者さんはとても新鮮でした。
でね、ロビーに飾られていたお花の量がまたハンパなくて。
トイレ前や売店の前以外の壁という壁は、全部お花で埋め尽くされておりましたよ。
初日からまだ1週間たっていないから、全部揃っていたというのもあるのだろうけど、
とにかくキレイでいい香りでいっぱいで、わたくし、花見を楽しむべく
休憩のたびにロビーを歩き回っておりました。
いやー、「千葉市花の美術館」でも、あんなにいっぱいのアレンジフラワーは無いかも。
みーはーですので、名札?(お花に刺さってるやつね)の数かぞえちゃったのだけど、
120までは俺が数えた! 馬だ! 馬をよこせー! >何か間違えている
もっとありましたよ。
とにかくありとあらゆる有名人のお名前が。
J勢からは稲垣吾郎氏と滝沢秀明氏と国分太一氏から、
それぞれ胡蝶蘭のお花が届いてました。
(写真撮影は禁止されていたので、撮れなくて残念)
ともかく、
美輪さまが再び生まれ変わってしまわれる前に、
1回でも舞台を観ておけてヨカッタ。 >いやいや。まだまだご活躍くださることと。
とても素敵な初ナマ美輪さま体験でございました。
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