「次の駅で降りたい。」と君が言った。 ここで降りるということは今日はここで泊るということ。 いくら幼い君でもその意味は理解していたはずだと思う。
君のこと嫌いじゃない。 だからつい2人だけで遠出をしてしまった。 デートじゃない、デートじゃないけど・・・楽しかったよね? 少なくとも俺は楽しかったよ。 君のとびっきりの笑顔が見られたんだから。
君のこと嫌いじゃないんだよ。 だからなおのことここで降りるわけにはいかないって思ったんだ。 「ワガママ言わないの。」と一応笑顔で答えたものの自分でも顔がひきつっているのがわかった。 救いは君が俺の顔をみていなかったこと。
そのまま君はうずくまってしまった。 ずっと目的の駅までうずくまったまま・・・ 君はピクリとも動かないし俺にはかける言葉もない。 黙って窓の景色を眺めているしかなすすべもない。
暗闇がだんだん家の灯りに変わり最後は見慣れたビル群の夜景に移りゆく間もずっと君はうつむいたまま・・・ 「着いたよ。」という声にはじかれたように顔を上げ電車を飛び降りて走り去っていった君。 さよならぐらい言わせてほしかったと思うのは俺のワガママだね。 俺が君を断ったことになるのかな? そんなつもりはなかったんだけどさ。 嫌な思いをさせてしまってごめんね・・・ 遠出なんてしなければよかったんだよね。
|