書泉シランデの日記

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高島野十郎展
2006年06月24日(土)

出たついで、待ち合わせまでの時間つぶしに、高島野十郎という洋画家の没後30年展を見た。

狭いギャラリーに所狭しと絵が並び、人が多くて(NHK『日曜美術館』ででも紹介したんだろうか?)環境抜群とはいいかねるけれど、全然知らない人だったから、まあ、それなりに面白かった。

ただ、一番打たれたのは、ご本人のこだわりが象徴される蝋燭でも月でもなく、学生時代(東京帝国大学水産学科)のノートに描かれた魚の絵。これが半端じゃなく見事。アカデミックな用途の精緻なスケッチなのだが、線の美しさったらない。ご本人が生涯携えていたノートだそうだが、むべなるかな、である。

風景画が多く、画風が理知的だとか、あからさまに個性的だとかいうわけではない。とりたてて斬新でもない。しかし、自分の線、自分のタッチを追い求めた丁寧な画風であるし、自分の「頭」が納得しないことはしなかったんだろうな、と思ってしまった。「頭」を置き去りにして、情動のままに筆を動かす「芸術」とはちょっと違う。

また帝国大学の先生たちの肖像画だが、恩師自身のはあるいは自発的な作品かもしれないが、残りの2枚は注文制作だと思われる。しかし、描く人、描かれる人双方の人柄がしのばれるような誠実なものだった。肖像画の恩師の眼差しはとても暖かなもので、学問の代わりに絵画を選んだ弟子のことを十二分に認め、弟子もそれに感謝をしていることがにじみ出ているようにさえ感じられた。

途中で携帯が鳴って、ギャラリーのおねえさんに叱られたりしたが、なかなかいい展覧会だった。 このギャラリーのことはどこかしら軽視していたんだけれど、ちょっと見直そう。だけど、実際、同じビルに入っている魚屋の匂いが漂ってくるんです。空調のせいなんでしょうかね。



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