Emiの日記 | old day days list new day |
読了本「ラッシュライフ」伊坂幸太郎→→→2009年09月09日(水) 読了本「ラッシュライフ」伊坂幸太郎 人生は神の恩寵か、偶然の重なりか――。 プロフェッショナルの泥棒・黒澤。 診療内科女医・京子。 一人の男を神とあがめ、盲目的に惹かれる青年・河原崎。 リストラされ浮浪者となった男・豊田、そして犬。 メインの四人と比べるとやや存在感が薄いが、若手画家の志奈子の物語も忘れてはいけない。 四人それぞれの物語は、同じ場所、同じ女性(日本語を書いて欲しいと展望台の下で紙を持って立っている白人女性)との出会い、好きな文字を紙に書くという同じ行為から始まるが、その後の展開は様々である。 黒澤の物語は泥棒の哲学から、偶然であった旧友の笹岡との人生の哲学討論へと展開していく。 京子は不倫相手の青山と互いの結婚相手を殺すつもりが、バラバラ死体と関わってしまったことにより、もともと失いかけていた正常な思考をゆさぶられ、しだいに常軌を逸していく。 河原崎は父親が自殺したことが心の大きな傷となっており、神とあがめられる高橋を崇拝するが、彼は本当に神なのかただの人なのかという疑念を持った塚本とともに、神の解体にいどむ。 豊田はリストラの裏にあった嘘、すべてを失った怒りと空しさ、老犬との出会い、様々な出来事によって、考え方をかえていく。 物語は志奈子を含め五人分がみごとにリンクしている。しかし、その時間軸は巧妙にずらされている。読者によってどの時点でそれに気づくかは違うだろう。 ちなみに、わたしは、ルール違反で「時間軸がずらされている」ことを文庫に収録されている解説から知ってしまったた時点――ちょうど半分ほど読んだところからは、どうつながっているのかを考えながら読んでいた。それにしても、豊田の時間があれほど遅れてスタートし、たったの一日だったとは、驚きである。郵便局員がすべて逃亡していった謎、あれは黒澤の泥棒仲間へのアドバイスであったのだとわかると、にやりとさせられた。 豊田は宝くじを換金するだろうか。 それとも、またひょんな流れから誰かにそれを渡すのだろうか。 最後までは語られていないが、四人の中でも豊田には幸せになってもらいたいと思わずにはいられない。 物語がリンクする上で、当然のように同じ舞台で違う物語が進行する場面がたびたび出てくるが、その都度、四人それぞれの視点で描写される背景、人物がうまい。 四人の視点、考え方、生き方にぶれがないため、この人ならこう見るのかと感心するほど説得力がある。 いや〜ほんとにうまいね! その一言につきるや。 2008年09月09日(火) トライアル |
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