Rocking, Reading, Screaming Bunny
Rocking, Reading, Screaming Bunny
Far more shocking than anything I ever knew. How about you?


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*名前のイニシャル2文字=♂、1文字=♀。
*(vo)=ボーカル、(g)=ギター、(b)=ベース、(drs)=ドラム、(key)=キーボード。
*この日記は嘘は書きませんが、書けないことは山ほどあります。
*文中の英文和訳=全てScreaming Bunny訳。(日記タイトルは日記内容に合わせて訳しています)

*皆さま、ワタクシはScreaming Bunnyを廃業します。
 9年続いたサイトの母体は消しました。この日記はサーバーと永久契約しているので残しますが、読むに足らない内容はいくらか削除しました。


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2006年05月20日(土)  He Hit Me (and It Felt Like A Kiss)

18時に渋谷でなかむらさんと待合せ。の、筈が。
一時間近く遅刻。今日はライヴのチケットをなかむらさんにおごっていただいてるっていうのに。一時間も。
すみません、正直に告白します。ただでさえ遅刻だったっていうのに、出掛けにふと思いついて久々に化粧しました。しかも例の、「美容部員が見てたら気絶しそうな」滅茶苦茶メイクで。
瞼にはきらめくシアン・ブルー、唇にはローズ・ピンクを、文字通り「塗る」。リップのラインもなければ(持ってるけど)、シャドーのグラデーションもアイラインもない(持ってるけど)。子供がセルロイド人形にクレヨンでお化粧してるのと変わらない。で、実はそれが狙い。お人形のようなメイク。

私は7〜8歳くらいまではおしゃまな子供だった気がする。写真を見ても既に女の表情をして、しなをつくっていたりする。それがどういうわけか、10歳頃にはがさつな子になっていた。殆どおしゃれに興味がなく、本ばかり読んでいた。自分より知性で劣る男の子達には何の興味もなかった。
女という性に反発していたのかもしれない。いかにも田舎の中高生らしくちまちまとおしゃれしている同級生を見下していた。自分を綺麗に見せようとすることをいじましく感じた。今思えば、孤高を良しとする父の思想教育の弊害である。
それで私はずっと、何につけてもとにかく自分の内側だけを見てぐるぐると葛藤していたのだ。いつもいつも。

高校2年の時、同級生の男の子からいきなり、「おまえなら、女でもこれがわかるかもしれない」と二枚組のレコードを渡された。二枚組かよ、迷惑な、と思ったが、とりあえず帰宅して聴いた。
ライヴ盤。ラフな音。ああ、いかにも男臭い。これまで全く食べたことのない食べ物のようで、最初は少し抵抗があったが。
聴くうちにだんだんと。これは凄いものを聴いているかもしれないと思った。
実は、多くのロックン・ロールやブルースに見られるように、男の渋さかっこ良さだけで勝負している音楽は好きじゃない。何十曲やったって、ああはいはいかっこいいですねえとしか思えないのだ。
けれどこの音楽は違った。男臭いのには違いないが。まず曲が良かった。16曲全てどれを聴いても、ひとつひとつの個性がくっきりと際立っているのに驚いた。
同時にこのバンドは、少しも「セックス・ドラッグ・ロックンロール」的な男性的魅力がなかった。それどころか、ダサかった。
今も私は、このバンドを賞賛しようとすると、「ダサい」という言葉が真っ先に出てきてしまう。私はこの言葉を、このバンドに限っては賛辞として使っているのだ。
ロックは本来欧米のものだ。元々あちらで生まれたんだからしょうがない。英語の方が似合うのも当たり前だ。ロックをやる日本人達は皆、欧米に憧れてやっている。その私の基本概念をぶち壊した暗黒大陸じゃがたらとの出会い(実はあれも全く同じで、同級生のお兄さんから「おまえのクラスのBunnyだったら、この音楽がわかるかもしれない」と渡されたのだ)から一年。またここにひとつ、日本人のロックを地でやっているバンドがいた。
「ダサさ」と私が表現するのはつまり、日本人である身の丈のまま、己の中からだけ引き出して全てを提供していたからだ。少しも飾っていない。日本語でやる必然性のあるロック、というより、日本語が暴れていた。
終盤のこの歌詞を聴いた時の衝撃は忘れない。
ルイーズ 夜を蹴飛ばせ ルイーズ 甘くとろける囁き響きわたれ
ルイーズ 腰骨にくるぜ ルイーズ 極めつけのダンスをしまった足首できめてくれ

はじめは正直恥ずかしかった。そうしてどうしてもこの言葉が頭から離れなくなった。このフレーズは、いわば私の腰骨を蹴飛ばしたのだ。
特別男性的アピールをしようとしない男が、そのままの姿で女に要求しているのがこれか。女だからってどうして綺麗にしてなくちゃいけないのよ、などというお嬢ちゃんのたわごとを蹴飛ばす力がこのフレーズにはあった。どうしても、言い返すことが出来なかった。
────ちくしょう、腰骨にくる女になりたいな。そう思った。
PANTA & HALの「TKO Night Light」を聴いてから、私の中で何かが折れた。

だから。今の私が、女として綺麗になりたいと思うのは、あの時植えつけられたトラウマみたいなものなんだよ。

今夜クロコダイルで観た「PANTA & HAL 2006」については、あまり細々と語りたくない。
ただとにかく、すっごくかっこ良かったよ。昔よりかっこ良くなってるなあ。
2003年に何度か観た演奏よりも更に良かった。
「マラッカ」で始まり「マラッカ」で終わったけど。二度とも全く違っていて、全然飽きなかった。大好きな「屋根の上の猫」も、脈絡のないような「マーラーズ・パーラー'80」も、PANTAの言葉はいちいちドラマがあって、いちいち体で納得する。
楽しかったし、嬉しかった。

なかむらさん、ねふーどさん、今日はありがとね。

* 蛇足: 「ダサい」の反対は「オシャレ」で、私が「オシャレ」からイメージするのは例えばAOR。・・・大っ嫌いなんだよねw

He Hit Me (and It Felt Like A Kiss) (まるでキスのような殴打)  *Hole (1995) / The Crystals (1962)の曲。



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