オヤユビアザラシ。
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 「絵本の中の男の子も昔よくしてくれた友人も
  先に何処かへ行ってしまった。
  結局俺達残された人間てのは、
  ずっとその残り香、つまりドブの匂いとかだ、
  そういうもんに苦しみながら生きる以外ないんだろうと思うよ」


 静かに話すあの人の爪先を眺めながら、
 愛情とか憎悪ってのはいつか風化するけど
 喪失感だけは徐々に緩和されていくことなんて実は決してなくて
 たとえ形は変わっても同じ重さのまま
 その人の中に在り続けるんだろうと
 なんとなく考えていた。

 すごく古典的ではあるけど、
 誰かの中に自分を植え付けるために
 一番手っ取り早い方法であることは確かで、 
 私が岩井俊二の「リリイシュシュのすべて」を
 いつまでも忘れないのはつまりそういうことで、
 だからああいう映画が撮りたいと思う。
 

2004年08月07日(土)


カツキ |MAIL