mortals note
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2007年10月04日(木) se017

 君の望みを叶えてあげることはできない。
 そう告げたときの少年の顔を、巽は忘れられずにいる。
「だったら」
 悲愴な面持ちで、少年は深く黒い双眸を伏せる。
「だったら、誰が僕の望みを叶えてくれるんですか」
「お前、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
 巽は思わず、テーブルを叩いた。手をつけられぬまま冷めている珈琲の表面に、黒いさざなみが立った。
「分かっています」
 手元のカップに浮かんだ荒波を無表情に見下ろして、麻生貴行は小さく顎を引く。頷いたようだった。
「僕だってどうかしてるのは分かっているんだ。だけど、それ以外に何もないんです。ずっと昔から感じていた寂しさを癒してくれるのは、多分」
「何をそんなに焦ってるんだ、別に今日明日に死んだり殺したりっていう話じゃないだろう。バレずに生きていく方法ならいくらでもある―――」
「だから!」
 低く重い声音で、貴行は巽の言葉をさえぎった。
「だからもう僕は……どうかしているんでしょう」


            *


「もう俺は行きます」
 苦渋の表情で黙り込む名家の息子に、巽は静かに告げた。
 貴行の、痛みをこらえるような笑みを思い出していた。
「あの日、」



如月冴子 |MAIL

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