「こっちが非難口?」
「はい!早く、…中へ…!」
リビングには、年老いた女性がいた。
エレベーターの表示は『上』
「上に、何があると云うんだろうね…。」 老女が呟いた一言は、私にも引っ掛かった。
そうだ。 逃げるなら下だ。 ヘリポートでもあるならまだしろ。 上に、…上に何があるというんだ。
詰め込むように、車椅子をエレベーターへと導く。 私は誘導、他は何も知らない。
おかしな音がする。 当たり前か。 ぎりぎりまで押し込んだ車椅子の人達。 扉は閉まる。 『上』へと載せて。
がしゃん…ぐしゃっ…
何だ?
エレベーターはまた3Fへと降りて来た。
血まみれの 車椅子の残骸と かつて、否、人だった筈の残骸。 塊、…いや。これは。 ……何だ。
「これが…!人間の最期なの…!?」
顔を覆った誰かが叫んだ。 悲痛な叫びは囁くようで はっきり届いた。
胸を、貫いた。
がしゃん…っ
また響いた。
もう理解していた。
あの老女の云う通り 上には何もない。
そして、
「え…」
顔を覆ったままに彼女が 踏み入れたエレベーターは下へ向かった。
ぐしゃ…っ
鈍い音が響いた。
下にも何もない。
見えることのない 空を仰いだ。
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