つづきです。
ここで注。マルチェロの性格に決定的な影響を与えた母子追い出されの件と、その原因になった弟の誕生ですが、この流れだとそれが両方ともキャンセルされているので、方向性が90度から120度くらい違ってます。怒りっぽくて思い込みが激しいのは生来の性格だからどうしようもないとしても、複雑にたてこんだ愛情関係と階級に対するゆがんだ憎悪はありません。ゆえに、こっちのマルチェロはずいぶん身軽で伸びやかな性格になります。あくまで本編と比較してですが。
さて歳月は経ち、マルチェロは二十代後半、クラリスは十七歳(こだわり)。修道院という場所柄何年もほとんど会えない兄と妹でしたが。その間も末期的妹マニアの兄は機会さえあれば通信を欠かさず、一方突然見も知らない人の間で暮らすことになった甘ったれの幼い妹は、兄に対する(かなり一方的な)愛情を膨らませます。
時とともに超絶美少女から順当に超絶美女へ成長したクラリスは、いよいよ大人の女性の仲間入りを果たし、公の場に出ることを許されます。ちなみにその頃には、マルチェロはとっくに騎士団長ということで、貴族社会にさえ出入りできる社会的な地位を築いています。……性格の地が悪いので、ことさら歪まなくてもそれくらいの政治力は発揮します。
以後完璧に語りというより「あらすじ」になりますので、ヒマな方だけお付き合いください。
貴族社交界へのデビューというのは、昔から舞踏会と相場が決まっています。また、若い女性のデビューの際に、父や兄が最初のダンスの相手をつとめるというのも、かなりよくある話です。というわけで宮殿まで出てきた兄、当日にいきなりすっぽかしを食らわされます。それどころか、それっきり妹は行方をくらませてしまいます。軍務を兼ねていたため騎士の一隊を引き連れていた兄は手勢を動かして捜索に参加しますが、見つかりません。
ただし、この時連れていた従卒(普通、年少の軍属がなる。見習い)の一隊の中に、紛れ込んだ人間が一人。
修道院まで帰ってきてしまってから大騒ぎが起こります。夜の間は暗すぎて分からなかったのですが、見たこともない、しかも女の子が、シルエットの合う服がそれしかなかったのか真紅の服を身に着けて従卒の中に交じっていたのです。もちろんクラリス嬢です。マルチェロは驚きのあまり石になります。二の句が告げない兄に向かって、さらにとんでもないことを言い出す妹。
騎士になりたい、だから家を抜け出してきた―――
マイエラ修道院に限らず、世俗の騎士団はどこにでもあるし、普通女は騎士にならないし、家出してなるようなものでもないし、だいたい男子修道院に女が足を踏み入れた時点で大問題です。どこから突っ込んでいいのか分かりません。
突っ込み衝動のあまりのでかさにようやく普通に戻ったマルチェロが、とりあえず一対一で説得をこころみます。
「貴女は何を考えてるんですか!」←騎士たるもの、例え実の妹であれレディ相手にタメ口は厳禁です。 「何って、さっき言ったとおりです。私はお屋敷の中でにこにこしているお人形さんになんてなりたくありません。マルチェロにいさまみたいに立派な、強い騎士になりたい。修行させてください」 「だめに決まってる! い、いや、もしかしたら全くだめではないかもしれませんが、とにかく聖堂騎士団はだめです。そういう希望があるなら、とにかく家に戻って、ご両親と話し合って出直して―――」 「いや」 「また、どうして!?」 「他の騎士団にはにいさまがいないもの」
らちがあかないので、責任者である院長の口から断ってもらおうと、マルチェロは妹を院の奥に連れて行きます。思わぬ可愛いお客様に無邪気に喜んでいたオディロ院長ですが、クラリスの名前と身分を聞くとなにやら考え込み、マルチェロを遠ざけ、二人でひそひそ話し合って……。
「というわけで、本日より騎士見習いクラリス、ではない、ククールじゃ。よう面倒見てやってくれ」 「よろしくお願いします、騎士団長どの!」 「待てや」
あとは料理のし放題だ!!(ごめんなさい何かが涌いてます)
*え、元のマルとククの片鱗さえ残っていないと――それがどうかしましたか。私は女の子をいじめるのはきらいです。
拍手レス。
侑さんへ> 脳に回虫が涌いたよーな小説を気に入ってくださり、大変ありがとうございます(笑)DQ部屋がとんだ変態の巣窟になりかかっていますが、以後もどんどん進行していくのでご安心ください(は?)
りるるさんへ> わーいらっしゃーい(嬉) って本名はNGですよ! 作品のほうはいかがでしたか? また向こうで遊んでやってくださいね。
|