「本当にいいんですか」 彼はきっと後悔するのではないだろうか、と、自分にとってはほんの少しの利益にもならないことを考えて、思わず口に出る。 彼は敷居に足を掛け、ゆっくりと振り向いた。 心許ない白灯が、じ、と音を立ててその横顔を照らす。 深い陰影のせいか、酷く表情が読み取りにくい。 「そんなの、俺が決めたことだし。お前には、関係ない」 突き放すように笑った。 そんな歪んだ笑顔を一馬に見せるぐらいなら、さっさと出て行ってもらったほうがありがたいのだけど。 自分はどこまでお人よしなのか。 嘆息する。 「関係無くは、ないですよ。貴方がいなくなったら一馬が悲しみます」 「だから?」 意にも介さないといった様子で聞き返すその足は既に外を向いていた。
(本当は、そんなこと、思っても無いくせに) (欲しくて欲しくて仕方が無くてこんなところまで来て心だけ奪って捨てて行くなんて、臆病で中途半端なことをするほど、欲しいくせに)
全てをぶつけてやりたかった。藤代が現われなければ平穏なまま生活できていただろうことは事実。
(だけど一馬が)
喜んでいたから。笑っていたから。長い時をかけて得ることの出来たものよりも遥かに幸せそうな表情を、できればいつか自分の前で晒して欲しかったその顔を、藤代は一瞬のうちに攫っていったから。
(負けた、と思った。今度こそ。)
ここじゃあ駄目なんだと。一馬がいるべきは彼の傍らなのだと。 不甲斐ないと嘆くより先に、どこかで納得している自分がいた。 潮時なのかもしれない。 もう放して自由にしてあげるべきなのかもしれない。 柔らかで温かな手を、目の前の彼に、渡しても。
そう思ったから一歩引いてやったものを、この男は。
「本当に、要らないんですね?」 「くどいよ須釜。株なら全部、」 「一馬ですよ」 「・・・要らない。全部要らない」
そうして自虐的な台詞を吐いている間に壊れていくものがどれだけあるのか、彼はまだ気付かないのだろうか。
「じゃあ僕が全部貰い受けますよ」 「どうぞ」
了承の言葉の最後は廊下に向けられていて、聞き取りにくかった。 進行方向に向き直った彼は、これ以上何も残すことはないとでも言った様子で、挨拶も無しに去っていった。
ふ、と息を吐いて壁に背中を預ける。 一馬には言うな、と言われたけれど。
「どうしたものでしょうかねぇ」
もう自分の中では決まってしまったのだ、一馬を諦めると。 そして一馬が彼を追いかけることも自明で。 無駄に体力の要る追いかけっこをしているだけな気がする。
「とりあえずは」
必死な顔で問い正してくるだろう一馬を思い浮かべて、溜息を吐いた。
原作見て無いので、そのへん完璧無視な方向で! やっぱり抜き出すのってとてもやりやすい。 須釜と藤代の真田争奪バトルを書きたかったはずなんですが通り越して最終話一歩手前まで来てしまいました。
愛の嵐を知らない方には非常に申し訳ない。 や、私も知らないのですがシチュ萌え激しかったので書いてみました。 持ち株全部渡すっていう思い切りっぷりが藤代と重なりました。 株は置いといて、一馬はありがたく受け取っとけばいいのに須釜ー!
◎サッカー わー、増嶋君PK外しちゃっ・・・!韓国戦に続き・・・てか、今日はオウンゴール決めてしまっただけに辛かったろうなぁ、竜也くん・・・・。 木曜に友人から増嶋くんの名前聞いてしまって以来すっかり彼のファン確定です。
◎ケースケ ケースケ君お誕生日おめでとう!20だねぇ!昨日のうちに台風一過でよかったねぇ!心配してた新幹線も運転再開したから自然災害という愛の障壁は無くなったよ!思う存分須釜と戯れるがいいさ。
↑そんなわけあるか。ごめんなさいごめんなさいケースケ君は21だ!!ありがとイチイさん教えてくれなかったらこのままだったよ!
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