baby poem
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2005年05月01日(日) 東京メトロ 東西線

右脳と左脳の割れ目に
小石がはさまったままの状態で
俺がつり革にぶら下がっている

南砂町から地下にもぐると
夜も昼もない
いい加減語りつくされた
東京メトロ、東西線の
つり革についての話を
しようとしているわけだが

つり革は、つり革とはいえ
合成皮革でできており
その先に象牙を模したプラスチック
乳白色の
三角形の
つり輪
そして俺が
ぶら下がってうつむいている

うつむいた視線の先で眠っている
若い女を盗み見る
にのうでの
ガーゼのような白い布地がやわらかく
体温がここまでつたわってくるようで
右脳と左脳の割れ目にはさまっている
俺の純粋な小石が
バターのように
溶け出すのがわかるのだ
脳の割れ目をつたって
したたりおちる

それが彼女の
にのうでの白い布地に
黄色いしみを作り
肌の表面で温められた
バターフレーバーが
彼女の寝汗の蒸気とともに
ガラス窓、壁、天井までたちのぼり
天井には銀色の棒
つり革
そして
俺がぶら下がっている
右脳と左脳の割れ目には
結局小石が挟まったままだ

日本橋
若い女が目を覚まして立ち去った
そして電車は走り出す

振り向けば
俺のゆれと同期して
無数のつり革がゆれる
目的地を忘れて
このままずっと移動し続けるのかもしれない
というような気分になる


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