baby poem
DiaryINDEXpastwill


2005年01月10日(月) 風のつよい日

風のつよい日におりていく
記憶をさかのぼりにおりていく

子供のころから慣れ親しんだ
あきらめの場所へ
行きかたを知っている
というか、ただ、おりて行きさえすればいい

あきらめの場所には何があるか知らない
でも、とりあえず、壁がある
いつからあるのか知らない
当たり前のようにあった
意識のめばえのころ、もう壁はそこにあった。

壁に向かって走っていって、そのままぶつかるケース
壁に向かって走っていって、その直前で直角に方向転換するケース
壁に向かってスッと、立って、チョークでもって絵を描くケース
壁に対する対処法がいろいろあることを
本で読んで知った
しかし、この壁は、ほんとにそれらと同じ壁なのか?
私はといえば
壁に対する対処法として
壁の前で眠ることを覚えた
壁を見ると眠くなるのだ
壁の向こうの夢を見る

しかし、この壁は、ほんとにその、壁、なのか?
むしろ僕には、なんらか、ラッキーなことに思えるよ
あきらめの場所から
壁をめぐることによって
きっと心の形さえ、たどることができる
安心を与える
吸収体。
自転車のスピードを落として
その前で止まり
頭を預けて湿り気を感じる
コケの生えた壁。

でもね、風のつよい日には
もう少し、おりていかなければならない
私には入れない、記憶をさかのぼって
おりていかなければならない
壁の生まれたときまでだ
まだ、もう少し、先があるようだ


南関東の冬は、東北生まれの自分にしてみれば
水道も凍らないくらいで
物足りない
でも、1月にはいって今年はとても冷える
建物の間を歩いていて、急に風が、どっと押し寄せて
顔が硬直するのも、さわやかに感じられる
そう、思いながら帰り道
「ファイトが沸いてきた」
と、独り言を言った

ファイトなんて、ついぞ使ったことのなかった概念が
珍しかったし、おもしろかったのだ
胸のすくような気分になったのだ


on baby |MAIL

My追加