SS日記
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2004年10月29日(金) 空の境界 6

教室から昇降口へと続く廊下を榛名元希は歩いていた。
放課後の校舎はすでに人も疎らだ。
先日阿部が言っていた事件がマスコミから発表され、部活動が全面的に禁止された為だ。
当然、シニアチームの練習も再開の目処さえたっていない。
違う学校に通っている阿部ともあれ以来会っていなかった。
下駄箱の前、靴を履き替えようとして手を止めた。

(公園にでも呼び出すか?)

キャッチボールをするとでも言えば、阿部は文句を言いながらもきっと来るだろう。
そう思うと、それはとても良い考えに思えた。
急ぎ、鞄の中から携帯電話を取り出し―


―なんでオレはわざわざアイツの顔を見に行こうとしてんだ?


途端、顔を顰める。
よく分からない苛立ちが榛名を襲う。






近頃気を抜くといつも、いつでも阿部の顔が脳裏に浮かぶ。
その度、よく分からない苛立ちと痛みが榛名を苛んだ。


―何故なんだ。


きっと、阿部がいけないのだ。








タカヤが在るから

オレを見るから

タカヤが微笑うから

 有り得もしない

 叶う筈のない

夢を見せつけるから―







「榛名」

名を呼ばれ、榛名は振り向いた。



touya |MAIL

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