プープーの罠
2005年06月12日(日)

マンモスの肉

うっすらと気配は感じていたが
やはりそうだった。

買い物に付き合う
という約束が実現した時
男は改めてそれに
「デート」という名前をつけた。

知らない人ばかりの集まりの中で
知らない人だったこの男は
根っから 人が好き といった風情で
満遍ない感じがしていた。
実際に大きな体躯も、11歳離れた年も、
それ相応の懐の深さも大らかさも
何だか保護者のような雰囲気、
安全だ と私は思った。
むしろ
無害 といった感じだったかも知れない。
買い物に誘われた時も思慮の余地もなく
二つ返事で気楽に約束をした。

または『そういう』付き合いになってもいいか
と思っていた私も中にはいた。

唐突に下の名前で呼ばれる。
さり気なさを醸し出したスキンシップ。

案外男の人というのはいくつであっても幼いもんだなぁ
なんて見当外れなことをぼんやりと
考えてみたりそれとも
大人だからこそ分かりやすくしている
のだろうかと思ってみたり、

この男はことごとく八木君と正反対だから

なんてまたいちいち比較に出すのもアレですが
八木君とうまくいかなかったのだから
その正反対はうまくいくんじゃなかろうか
という至極 机上理論 的モノの考え方により
私はそう思ってみたり
した次第ですがやはりそれは机上でしかなく
実際の私は目の前で繰り広げられるこの男の、
体格通りの食べっぷりにひどくげんなりとし、
それに反比例するようにみるみる
と食欲が落ちてゆく。

相変わらず『そういう』のには慣れることができない。
何かが始まろうとするのは怖い。
好かれることが苦手で
嫌われることには積極的で

まぁとにかく、
心を割ったから話していることではなく、
時間がたっぷりあって話すことがない
ときに大抵話すような、私にとって
言ってみれば世間話の領域でありむしろ
その話の中にあったように

人付き合いに壁をつくらない

ようにあなたに映っている私のシャッター
には中身に似た絵が描いてあるだけで
本当はちっとも開いてはいない。
例外はない。
どんなに親しい相手であろうと肉親であろうと
ましてやよく知りもしないあなたがその例外
であるはずはない。
私は壁があることを説明していたに過ぎない。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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