BERSERK−スケリグ島まで何マイル?-
真面目な文から馬鹿げたモノまでごっちゃになって置いてあります。すみません(--;) 。

2006年02月22日(水) AVALON


以下にセルピコ×ファルネーゼ派の方には
少し辛い話があります。

お読みになるかどうかはご自身で判断なさってください。
読後の責任は負いかねますが
「こんなもん書くな」とか「へたくそ!」等の
ご意見メールは受けつけておりますので
苦情はそちらからどうぞ。












ーーーーーーーーーーーーーーーAVALONーーーーーーーーーーーーーーーー

アヴァロン、伝説の島
林檎の木が繁る霧の彼方に
アヴァロン、妖精の島
やがて英雄は訪れる

アヴァロン、伝説の島
英雄は旅立つ
アヴァロン、聖霊の島
今、9人の女神と共に

霧の水面に
船は旅立つ
アヴァロンへ………


スケリグ島は、古の伝説の島そのものだと、ファルネーゼは思った。
それもガイゼリック王以前の、王や騎士達の伝説の時代だ。
とてもとても古い、人の神などが存在する以前の時代
ある意味、汚れなき、英雄達の時代……。

しかし、自分達が抜け出してきた大陸となんという違いだろう
ファルネーゼとセルピコの居る今の場所は
林檎の木の林で、林檎の白い花が咲き乱れている。
霧が漂い、緑濃く深く
スミレ、オダマキ、小さな百合他
名も知らぬ花々が地を覆っていた
まさにパックの語ったごとく、花々が咲き乱れる伝説の島

偉大な魔術師なのだろう、俗世の教会でも大審院でも会った事のない
信じられない程の賢者にも引き合わされた
まだ面通りだけの印象でそうなのだから
どれほどの魔術をここで学べるのか
ファルネーゼの胸は期待と畏れに高鳴った

だが、横にいるセルピコはどうだろう?
感情を表に出さないのが常の男であったが
金色の前髪にがかかった横顔は、何かに憑かれているかの様に
林檎林の奥に向けられていた。
そういえば、この散策を誘ったのもセルピコの方からで
ファルネーゼの経験からは”あるはずのない事”だったのだ。

「奥に湖があるそうです、行きましょう」
「え?そうなの?」
ファルネーゼの返事も待たずに、セルピコは林の小道を歩き出し
驚いた彼女はあわてて後を追いかけた。
そう、時間もかからずに林檎の林の奥の湖についた。
周囲に霧が立ち込めていたが、周囲の緑をとけ込ませた様に
透明で美しい。
美しい魚の銀鱗が光った様に思えた。
小鳥が密やかに鳴いている。
この美しい情景の中にあって、ファルネーゼは不安にかられた。
この静けさというのは、何かしか不吉な思いがする。
それは私がまだ至らない人間だという事なのだろうか?

「!?」
傍らに存在しない様な気配で居たセルピコが
常に腰に下げていたレイピアを鞘ごと外し、湖の中心に投げ入れたのだ。
「どうしたのです!?その剣はとても大事なものではありませんか?」
剣の柄が美しく唐草の様に細工され、その剣こそが
セルピコの叙爵の時にさずけれられた貴族の証なのだ。
「ええ、とても。でも、もう私には……」
肩をつかんで揺らすファルネーゼにも反応せず
セルピコは呆けた様に湖を凝視していた。
 ファルネーゼはセルピコの視線の先を見た。
金属が水に落ちる、重々しい音はせず
一目で貴婦人の手とわかる白妙の手が
美々しい剣をつかみ、三度振って剣と共に湖の中に消えた。

「あれは……」
そう時間は経っていなかった様に感じた。
剣が湖に沈んでから少しして、湖の中心から波紋が広がり
そこから銀の王冠を被った長い金色の髪
白く長い古風なドレスをまとった、美しいとさえ言うのも
はばかられる様に麗しい女性が浮かび上がり
湖面をすべる様に、優雅にこちらへ歩いてきた。

「邪悪の渦中から、よくぞこの島へ辿り着かれました。
さぞお疲れの事でしょう。
戦いの狭間でありますが、どうぞ十分に安らいでくださいませ」
美しい声だった。髪から白いドレスはまったく濡れていない。
ファルネーゼを優しく見つめる、湖水の様に
深く澄んだ翡翠の瞳。
この方は人の領域ではない。
この方の前では嫉妬という醜い女の妄執すら消え去る。
女のファルネーゼでさえ、魅せられた様に目の前の貴婦人に見入った。

と、ぐらりとセルピコの身体がゆらぎ、貴婦人の腕の中へ崩れ落ちた。
「な、何をなさるのです!?」
「この方は大変疲れていらっしゃいます。
もう一歩も進む事は出来ないでしょう。
我島へ迎えるに相応しい方です」
抗い難い湖の貴婦人の声だった。
セルピコを腕に抱いたまま、貴婦人はゆっくり岸辺から離れていく。
「お待ち下さい!待って、待って下さい!セルピコは!」

「私の物だって言うんでしょう?」
いつのまにかファルネーゼは、ふんわりと浮かんだ
湖の貴婦人の姉妹とおぼしき女達に取り巻かれていた。
どの女性も透ける様に美しく、だが意地悪な笑みを口に浮かべていた。
「そうよ!私のものよ!私が拾って、私が命を助けたのだもの!」
「うふふ」
「うふふ」
妖精達の澄んだ笑い声が幾重にも重なる。
「でも、酷い事をしてたわ」
「”私の物”だから鞭で打って、傷だらけにした」
「身も心も」
「あの方のお母様さえ焼き殺した」
「あの方に心があるなんて考えもしなかった」
「もう貴女には他の殿方がいるじゃない」
「その方に守ってもらいなさい。
この方の心の奥底には哀しみが氷となって固まっている。
貴女ではそれを溶かす事は出来ない」
「だって貴女が凍らせたのだもの」
「貴女にとってあの方はなに?」
「もういらないでしょう?むかし焼いた人形の様に」
「投げ捨てる前に、私たちに頂戴」
「投げ捨てるわ、他の男が出来たのだもの。
物なのだもの、捨ててしまうわ、いらなくなったら」

「わ、私は……」
混乱するファルネーゼの周囲で笑いさざめく妖精達。
湖の貴婦人程に慎みには欠けている様だ。

「淫蕩な人の子、残酷な人間の女!」
「違う、違うわ、私は……」
何か言い返したかった。でも、何も言えなかった。
ファルネーゼは涙も出せず、湖の岸辺にへたり込んだ。
かしましい妖精達も、気高い貴婦人も、セルピコと共に姿を消した。

「!」
ファルネーゼは飛び起きた。
「どうかなさいましたか?」
いつもの様に聡いが、それを感じさせないセルピコの
気遣いの言葉がかけられた?
襲いかかる化け物達との戦い中、眠れた貴重な時間だった。
「いえ、なんでもないの…」
「化け物三昧です。いくら慣れたとはいえお疲れでしょう」
「そうね」
ファルネーゼはあの剣を探した。
セルピコは抜かりなくあのレイピアを携えていた。
「お前は何処へもいかないわね?」
「え?まあ、今のところ」
セルピコは不思議そうに、細い瞳を瞬かせた。
敵はつかの間の憩いも切り裂く様に現れ
続く戦いの中、ファルネーゼはその夢を忘れた。


 < 過去  INDEX  未来 >


管理人 [MAIL] [BBS] [Blog]

My追加