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血は、空気に触れるとすぐに凝固する。 出血を最小限に防ぐ効果と思うと、人体ってすごい。
今日も会社で鼻血が出た。
大学ならともかく会社で鼻血は物騒だと思い、 天井を見つめながら黙って血が止まるのを待った。
鼻の中がかさぶたでカチカチになってくる。 あぁ息苦しいなぁ…なんて思っていたところ、 隣で社員さんとアルバイトのNさん(共に女性)が 机を挟んで立ったまま仕事の打ち合わせを始めた。
何となくふたりのいる方向に顔を向けたまま、 ぼくはキーボードの手を休めて深いため息をついた。 「ふぅ」。次の瞬間。
ぽーん
と、黒い塊がNさんたちのいるど真ん中に発射された。 ぼくの鼻から。それは赤を通り越してすでに黒かった。
冬の乾燥でミイラみたいにひからびていた。 落ちた先が紙の上だったためカサカサと音まで鳴った。 Nさんたちの会話も一瞬固まった。
違うんですこれは血なんですぼく鼻血出てたんです …言えなかった。何も言えなかった。
こんなことなら最初から騒いでおくんだったよまったく。
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