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2005年04月29日(金) 悩みの話

ちょっとぶりに大学へ。

ゼミ室で先生が卒業生の女の子と話し込んでいて、
それとなしに聞き耳を立てつつカレー丼を食べていた。
テーブルの斜め前で。

どうも内容は、

「女性が相談事をする場合、ただ話を聞いてほしいだけで、
一方的に女性が話しきってスッキリする場合があるらしい。
俺が的確なアドバイスをしてあげると、なぜか怒られてしまう。
ただ話を聞いてほしいだけ、という相談があることに、最近やっと
俺は気づいた。…でもそれじゃ、俺でなくてもいいじゃん」

ということで。
ちなみにこの場合の女性とは、先生の奥さんのことである。

最近気づいた、ということは、この人ぼくより20年近く遅れているな
と思ったけど口にしなかった。女性の話に対して聞き役に徹するのは、
青臭い中学生が色めき立つ高校生になったと同時にぶち当たり、
気づく悟りのようなものだ。ぼくは高校二年で気づいた。

場合にもよるが、そこに「俺」の意見など必要ないのだ。

”それじゃあ、俺でなくてもいいじゃん”
というわだかまりは残る。それに、ただ頷いているだけじゃ、女性も
「この人、本当に私の話を聞いてるのかしら」と疑いを抱きはじめる。

そういったことも踏まえて、ぼくはその話に割り込んだ。

「男が先に問題の糸口や結論に気づいた場合でも、
先生はそれを口にしちゃいけないんですよ。で、そこでですよ、
相手の女性に結論を導かせるように、うまく質問を投げかけるんです。
女性に全てを言わせるんです。悩みの本質も、その答えも全部」

なんで俺はインチキ恋愛アドバイザーみたいなことを言っているんだろう
とカレー丼を食べながら思ったが、的はずれなことを言ったつもりもない。
なのに先生の顔は疑いに充ち満ちていた。


悩み事というのはドラマの台本で、
女性の話の内容はセリフに等しい。
台本の通し稽古に付き合っているのが相談相手だと思う。
つまり、相手役の俺(先生)はあらかじめ台本に登場しない人物なのだ。

本に出ていない者が、主役のセリフを奪うことはあってはならない。
そういうのは「お呼びでない」というやつだ。もちろん、先に話のオチや
新たな展開を見いだしたらアドバイスとして言うのが相談相手の本来の務めだが、
本来の務めよりも、むしろ通し稽古にただ付き添うことが重要だったりする。
相手が身近な存在であれば。

なんてことを思ったりしたが、先生は急な会議に出てしまった。
”俺でなくてもいいじゃん”ということについても、ぼくは否定したかった。
その考えは寂しすぎる。それをぼくが受け入れてしまうことはできない。

ぼく自身が、女性から見て先生ほど豊かなアドバイスを期待されていないのは
間違いなく、一緒になって怒ったり、共にため息をついたりしてしまっている。
相談相手である以前に話し相手として。

それで相手の気が楽になるのなら、それでいいと思っている。
同時に、本当に力添えができたという達成感がないのも確か。

そもそも、女性のいう悩みは、本人が解決策を知っている場合が多い。
そう頭で決めつけてかかると後で失敗することもあるといえばあるので、
相談役は、まず相手が解決策を気づいているか否かを判断する必要がある。

とか書いておきながら、実は自分も「解決策」を言いたがりなので、
上に書いたような「質問攻め」から話を広げるようにしているんだと思う。
何より、お喋りが好きだから。


そう、基本はお喋りだ。そして、みのもんたの表情筋(冗談)
…こんな「結論」になるはずじゃなかったんだけどなぁ。
分からなくなってきたので、GW明けにでも先生に相談しよう。




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