うちの実家の、祖父母の家はお寺だった。山奥にこつ然とある、南嶺山大福寺。祖父は僧侶で、けっこう広い庭には灯籠や、鐘、水子地蔵、そして本堂があった。子供の僕らには、格好の遊び場だった。正月になると、親戚一同が集まって、たき火をしながら除夜の鐘をついた。108の煩悩が抜ける瞬間。そんな祖父母が、山から下りたのが今年初め。もう、あの鐘を鳴らすこともないのか。煩悩が溜まる日々。それもまた、一興。